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2022年度診療報酬改定の答申を受けて日本医師会は2月9日、日本歯科医師会、日本薬剤師会による三師会会見のほか、四病院団体協議会との合同会見を開催、日医会長の中川俊男氏は、「新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、今回の改定により医療提供体制の綻びが少しでも修復することを願っている。しかし、医療提供体制や患者の状態を少しでも損なうようなことがあれば、抜本的な修正を要請する」との見解を示した(日医以外の見解は、別途記事を掲載)。
特に急性期入院の「重症度、医療・看護必要度」の見直しを問題視。新型コロナ対応にあたる医療機関の経営にさらなる影響を及ぼすとし、「残念」と受け止めた。不合理な内容は是正しつつも、今回の改定でいったん立ち止まり、中長期的な視野に立ってあるべき姿について改めて考えることを求めた。
今改定の注目点であるオンライン診療やリフィル処方箋の導入についても、「今後、問題があれば抜本的に修正する覚悟も辞さず、しっかりと検証していく」と語気を強めた(『オンライン診療「営利追求の市場化」けん制、中川日医会長』、『リフィル処方箋「医師の処方による」、中川日医会長』を参照)。

中川会長は、看護職員の処遇改善のための特例的対応が、医師をはじめ広く医療従事者の処遇改善、働き方改革につながっていくことを期待したほか、かかりつけ機能を後押しする内容であるなど、前向きな受け止めを示した一方、特に「重症度、医療・看護必要度」の評価項目変更を問題視した。
「毎回の改定で手直しが行われ、医療提供体制を確実に維持するための予見可能性を低下させる」と指摘し、「重症度、医療・看護必要度に振り回されている歴史であり、医療機関のものすごい負担になっている。少し落ち着いたらどうか。改定の度に厳しさを増しており、(基準を)緩和するなら別だが、2年後の改定では触ってほしくない」などと釘を刺した。
オンライン診療に関しては、「対面診療との比較で、触診・打診・聴診等が実施できないものであることが明確化されたことは評価したい」と述べた一方、「規制改革を推進する立場からオンライン診療拡大の強い要求があり、医師・患者間の時間・距離要件の継続等は認められなかった」と問題視。
リフィル処方箋の導入についても、「受診回数の減少を通じて医療費の抑制を企図する財政当局からの強い要請があった」と振り返った。
「最後に決めるのは中医協」
会見では、今改定の議論のプロセスへの質問も出た。
コロナ禍にあって中医協はオンラインでの開催が続いたことから、「対面で実施した議論とはどうしても異なるが、最終的にはオンラインでも真摯な議論ができたのだろう」との受け止めを示した上で、「中止すべきとまでは思わなかったが、新型コロナがこれだけ全国的に拡大している中で、改定を通常通りにやっていいのかと思った。コロナ禍で傷んでいる医療機関経営を立て直す改定になったかどうかを、しっかりと検証していきたい。問題があれば期中であっても見直してもらいたい」と続けた。
不妊治療の保険適用などは「首相の一声で決まっているのではないか」との質問には、次のように答えた。「以前から当然そうしたことはあったのだろう。ただ、中医協の議論が形骸化した面もなくはない。しかし、中医協は厚労省のトップの審議会であり、誰が何と言っても、最後に決めるのは中医協であることを担保しなければ、日本の医療を守っていけない」。日医常任理事の城守国斗氏も、2月2日の中医協総会で「中医協軽視」とも言える状況を問題視する発言をしていた(『「中医協の外で制度設計」「利便性を偏重」、審議の在り方に異議』を参照)。不妊治療の保険適用そのものについては、「保険適用を慎重に、と言う人は、財源面からそう言っているのだろう。妊娠を望む人の経済的な負担軽減を考えれば、保険適用はよかったと思う」と述べた。
日医と三師会、四病院団体協議会での中川会長の会見内容は以下の通り。
三師会合同会見:中川日医会長
2022年度診療報酬改定に向け、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、新型コロナと全力で闘っている医療従事者と医療機関を支えるため、全力を挙げて診療報酬本体のプラス改定を求めてきた。2021年11月9日の国民医療推進協議会総会で、「国民の生命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制は、車の両輪として何としても維持しなくてはならない」との決議を採択した。
財政制度等審議会は、医療機関に新型コロナ対応の補助金を投入していることなどを盾に、躊躇なくマイナス改定を行うべきと主張したが、地域医療を守るためには経常的な診療報酬で医療機関経営が成り立つようにしなければならない。新型コロナ対応を通じて、通常の医療の余力こそが有事の際の対応力に直結することも、まさに明らかになった。
2021年12月22日の厚労相と財務相の合意で、国家財政が全体として極めて厳しい中、診療報酬本体プラス0.43%と決まったことは率直に評価したい。
プラス0.43%のうち、今回は看護の処遇改善のための特例的対応にプラス0.2%が確保された。今後、医師、歯科医師、薬剤師をはじめ広く医療従事者の処遇改善、働き方改革につながっていくことを期待する。
改定の大きな柱は、(1)新型コロナへの対応、(2)かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の評価――だ。
新型コロナ流行下で医療提供体制が逼迫する中、地域で身近なかかりつけ医師等が患者に寄り添う大切さが改めて認識されている。三師会として、今回の改定は、かかりつけ機能を後押しするものと受け止めており、それに応えられるようかかりつけ機能を充実させていきたい。
「重症度、医療・看護必要度」については、公益裁定が下され、心電図モニターの管理という内科系の患者像を表す項目が削除となった。新型コロナに対応する医療機関の経営にさらなる影響を及ぼすことになり、残念だ。「重症度、医療・看護必要度」は、毎回の改定で手直しが行われ、医療提供体制を確実に維持するための予見可能性を低下させる。不合理な内容については是正しつつも、今回の改定でいったん立ち止まり、中長期的な視野に立ってあるべき姿について改めて考えることを求める。
オンライン診療に関しては、対面診療との比較で、触診・打診・聴診等が実施できないものであることが明確化されたことは評価したい。しかし、規制改革を推進する立場からオンライン診療拡大の強い要求があり、医師・患者間の時間・距離要件の継続等は認められなかった。
リフィル処方箋の導入についても、受診回数の減少を通じて医療費の抑制を企図する財政当局からの強い要請があった。
しかし、保険診療には、地域医療を守る役割があり、患者の安心と安全を最優先しなければならない。診療報酬はその要件も含めて、そのための国民への約束だ。しっかりとした要件の下、患者の安全を丁寧に確認しつつ進めていくべき。
答申書附帯意見で、引き続き検討すべき項目が掲げられている。今後、問題があれば抜本的に修正する覚悟も辞さず、しっかりと検証していく。

四病院団体協議会合同会見:中川日医会長
総論は、三師会合同会見の通り。各論で3点について見解を述べる。第1に新型コロナへの対応、第2に子ども・子育てへの支援、第3に働き方改革――だ。入院については、四病協からコメントをいただく。
第1に、新型コロナへの対応について。日医・四病協は、新型コロナ対応に全力で立ち向かっている医療機関への十分かつ適切な支援を求めてきた。その結果、今回の改定以前に、診療報酬の時限的・特例的な見直しが行われ、さらに今回の改定でその継続および充実が図られたことを評価したい。
外来については、外来感染対策向上加算、連携強化加算、サーベイランス連携加算が新設され、外来の感染防止対策をしっかりと下支えする仕組みができた。
新型コロナ流行下で、かかりつけ医が大きな役割を果たしている中、今回の改定で、地域包括診療料・加算の要件に予防接種に係る相談への対応が追加された。機能強化加算の要件には、健康管理の相談に応じることなどが算定要件として明確化された。日医として、かかりつけ医機能の充実に努めていく覚悟だ。
第2は、不妊治療、生殖補助医療への保険適用。今回の改定は、子ども・子育て支援に診療報酬が本格的に寄り添おうとするメッセージだと受け止めている。例として、不適切な養育等が疑われる小児患者に対する支援体制の評価の新設、入退院支援加算の対象にヤングケアラー・家族が追加されたことが挙げられる。小児慢性特定疾病や医療的ケア児に係る主治医と学校医等との連携も連携先が拡大され、小児かかりつけ診療料も診療所等の体制に応じて算定できるよう見直された。
小児科や産婦人科の医師を中心に、子ども・子育てに心を寄せる多くのかかりつけ医の支援になるものと期待している。
なお、不妊治療については、答申附帯意見の通り、早急に検証、検討を行い、より適切な内容に進化させていくことを期待している。
第3は、働き方改革。前回の改定で、医師の働き方改革への第一歩を踏み出したが、さらに進める方向で見直しが行われたことを評価。看護補助者の活用推進の評価の新設をはじめ、チーム医療全体として働き方改革が支援されつつある。
看護職員の処遇改善には、診療報酬本体のプラス0.2%が充てられる。2022年度上期は補助金、10月から診療報酬で対応することになり、診療報酬の詳細は今後中医協での議論となる。補助金は、看護職員以外のコメディカルの賃金改善に充てることもできる。診療報酬についても、できるだけ幅広くかつ公平に、しかし同時に医療機関が追加負担をしないで済む設計にしてほしい。
療養・就労両立支援指導料の対象疾患や対象職種が拡大され、患者の働き方や生活の支援も進んできている。医療現場も厳しい環境にあるが、新型コロナで多くの方の生活が厳しい中、医療従事者はチーム一丸となって、これまでにも増して患者を支えている。
新型コロナの収束が見通せない中、今回の改定により医療提供体制の綻びが少しでも修復することを願っている。しかし、医療提供体制や患者の状態を少しでも損なうようなことがあれば、抜本的な修正を要請する。
医療現場では、新型コロナとの闘いがむしろ厳しさを増している。日医と四病協は、医療の現状を発信し、医療の現場をより良くする提言をたゆまず続けていく所存だ。

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