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【編集部から】対応の悩ましい軽度の検査値異常について、見逃してはならない疾患、追加ですべき検査、治療開始か経過観察かの判断、専門医への紹介のタイミングなど、具体的な対応を専門家に解説してもらうシリーズ「悩ましい検査値の異常」。今回取り上げるテーマは腫瘍マーカーの「CEA」について。
「CEA値 6.2 ng/mL」は消化器系のがんですか?
はじめに
近年、健診のオプション項目に腫瘍マーカーがあり、CEAの軽度高値を指摘されて患者さんが受診、または近医の先生から紹介されることがあります。健診などで、簡単に血液で検査ができるという利点はあるものの、異常値が出た場合、数値によっては、かえってどの程度まで検査をしたらよいか困ることがあります。
CEA
CEA(carcinoembryonic antigen:癌胎児性抗原)は腫瘍マーカーの一つで、内胚葉由来の消化管粘膜のがん化の際に特異的に出現するので、大腸がんをはじめとした消化器がんを中心に広く測定されている代表的マーカーです。
CEAの基準値は、5.0 ng/mL以下で、それを超える値が出れば異常値となります。しかし、CEAの消化器系がんに対する特異性は低く、血液検査でCEAが高値だったとしても、それだけで必ずしも胃がんや大腸がんなどの消化器がんであるとは断定できません。実は、高齢者や糖尿病、長期喫煙者でも高値を示すことがあり、また、肺炎、気管支炎、結核、潰瘍性大腸炎、急性・慢性肝炎、肝硬変などでも軽度高値を示すことがあります。
「CEA高値」をどのように解釈するか
CEAは、さまざまな悪性疾患で上昇するため、臓器特異性は低いですが、がんの活動性をよく反映するため、臨床ではよく検査される腫瘍マーカーです。治療により変動するため、 進行がんなどの治療効果判定や経過観察時に主に使用されています。しかし、CEAは病期の進行とともに増加するため、早期がんに対するスクリーニング検査としての臨床的意義は低く、有用ではありません。
前述したように良性疾患や喫煙などでも高値になるため、一概に「CEA高値=がん」であるとは言えません。臨床的には、5.0-10.0 ng/mL以下であれば良性疾患や喫煙などの偽陽性である可能性が比較的高く、10.0 ng/mLを超える場合は悪性腫瘍を疑い、20.0 ng/mLに近いと悪性腫瘍を強く疑います。
「軽度高値」に対する対応
前述したように、軽度高値の場合は悪性腫瘍以外も考えられるため、まずは問診が重要です。特に喫煙は重要で、喫煙本数とCEAとの関係を見た論文によると、喫煙歴がない人と喫煙本数が11本以上の人では、CEA値に約1.6倍の差があると示されています。
しかしながら、悪性腫瘍の可能性が完全にないわけではないので、一般的な検査として消化器がん、肺がんなどを念頭においた上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査、胸部~下腹部CTやMRIを行いつつ、他の腫瘍マーカー(CA19-9など)の測定を行います。
ただし、各種検査をしても明らかな悪性腫瘍などがなく、偽陽性の可能性があっても、必ず3カ月後(最低でも半年以内)にはCEAを再検査し、上昇していないかどうかを確認することが必要です。悪性腫瘍であれば必ず上昇(微増でも)していきます。値に変化がなければ半年~1年以内に再検査を行い、その後は年1回の経過観察でよいと思われます。
おわりに
CEAは最も測定されている腫瘍マーカーの一つですが、数値の解釈には気をつけなければいけないマーカーです。大前提として、腫瘍マーカーが高いからといって必ずしも腫瘍があるわけでもなく、腫瘍があったからといって必ずしも腫瘍マーカーが高くなるわけではないと言えます。ただし、10.0 ng/mL以下だからといって必要な検査を怠らないようにしなければいけません。偽陽性かどうかは除外診断となりますので、必ず各種検査で悪性腫瘍の除外を行い、その後の経過観察(再検査)も行うことが非常に大切です。
前畑忠輝(まえはた・ただてる)
聖マリアンナ医科大学消化器内科 教授/医学博士
2001年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科に入局後、札幌医科大学第一内科にて消化器がんの発がんに関する遺伝子研究にて学位取得。専門は消化器内科、特に消化管がんの内視鏡診断と治療。最近まで慶應義塾大学医学部腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門に所属し、世界的名医の片腕として主に内視鏡診断および治療を行いながら、消化器がんに対する低侵襲療法の研究および医療機器の開発に取り組み、国内外で研究発表するだけでなく、招待講演や海外医師の実技指導、ライブデモンストレーションなどを行っていた。2020年4月より現職。臨床研修センター副センター長として研修医採用の責任者も兼任している。
関連リンク
悩ましい検査値の異常
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