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土曜特集

がん対策、今後の焦点 



東京大学大学院 中川恵一特任教授に聞く 


 政府は今後、6年間の国のがん対策の方向性を示した「第4期がん対策推進基本計画」を3月に閣議決定した。全体目標として「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」を掲げ、検診受診率6割への向上などを盛り込んだ。新たな基本計画のポイントについて、東京大学大学院医学系研究科の中川恵一特任教授に聞いた。

■(政府が第4期計画)“予防に力点”を評価/発症原因になる感染の防止を

 ――第4期基本計画のポイントは。

 中川恵一・東京大学大学院特任教授 がんの「予防」に今までより力点が置かれている点だ。避けられるがんの予防は何より重要であり、評価している。

 予防に関しては、喫煙や飲酒、運動不足など、がんの発症リスクを高める生活習慣の改善とともに、がん発症の大きな原因である感染症を防ぐことが大切になる。具体的には、胃がんの原因の98%といわれるピロリ菌や、子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)、肝臓がんの原因の7割とされるB・C型肝炎ウイルスなどだ。

 ――「がん医療」については。

 中川 基本計画では、「放射線療法」の項目にMRI(磁気共鳴画像装置)による「画像誘導即時適応技術」を用いた治療のあり方について検討すると明記されたことに注目したい。

 日本の高精度放射線治療はCT(コンピューター断層撮影)が主流だが、欧米などでは、リアルタイムで病巣を見ながら正確に放射線を照射できるMRIに切り替わりつつある。MRIの導入価格はCTの3倍だが、診療報酬は同じであるため、世界よりもMRIによる高精度放射線治療の普及が遅れている。

■(受診率6割へ)職域検診の法定化必要/女性に焦点当てた改善が急務

 ――「がん予防」に向けては検診が大事になるが。

 中川 基本計画には、がん検診の受診率目標を5割から6割に引き上げることが明記された。そこで重要になるのが職場で行われる「職域検診」だ。

 市区町村による「住民検診」は、健康増進法に基づく事業だ。負担する費用が「安い」から「悪かろう」ではない。死亡率を下げる科学的根拠があるからこそ公費が投入され、「良いから安い」ということになる。

 一方、職域検診は、あくまでも企業の福利厚生の一環であり、法的根拠がないのが現状だ。そんな中、われわれ専門家から見たら科学的根拠や有益性に首をかしげるようなことに高い費用を投じているケースもあり、“無法地帯”と言わざるを得ない。また、個別の同意を取らない限り、会社側で受診状況の把握や受診勧奨が難しいため、精密検査の受診率が住民検診より低い。

 がん検診の3割から7割は、職場で受診されているのが現実だ。基本計画には、職域検診の法的な位置付けも含め、がん検診全体の制度設計について検討するとされた。法定化に向けた議論を急いでほしい。

 ――職域検診では女性特有のがん検診が実施されない企業もある。

 中川 その通りだ。子宮頸がんや乳がんの検診を実施している職場は非常に少ない。これはかつて日本の職場が男性ばかりだったことの名残だ。

 今や女性の社会進出が進み、しかも39歳までのAYA世代のがん患者の8割は女性だ。女性に焦点を当て、現状を改善することが急務だ。

 私は、職域検診の受診率向上を企業連携で推進していく厚生労働省委託のプロジェクト「がん対策推進企業アクション」の議長を務めているが、今回の基本計画で初めてこのプロジェクトについて触れられた。この計画の下、民間企業と連携して、働く人が漏れなく適切な時期に有益性の高い検診を受けられるよう、取り組みの前進に期待したい。

■(「緩和ケア」の充実)診断時からの対応不可欠/普及へ実施体制の整備さらに

 ――緩和ケアの充実も図られるが。

 中川 緩和ケアは、第1期の基本計画から、柱の一つになっていたが、まだまだ足りない。先月、がんで亡くなった世界的に著名な音楽家は、一部報道では亡くなるまで大変痛みに苦しんだという。これが現実だ。

 今回の基本計画では、「専門的な疼痛治療を含む緩和ケアに係る普及啓発及び実施体制の整備を進める」とした。適切な緩和ケアが、全国どこでも等しく受けられるよう体制整備が必要だ。

 もう一つの課題は、心身がつらいにもかかわらず、相談をためらう患者が多いことだ。我慢せずに医師や看護師に対処を求められる仕組みが必要だ。私が座長を務める厚労省の「がんの緩和ケアに係る部会」では、医師や看護師が患者を常に支えることを説明し、診断時に患者に手渡す“宣誓書”を作成している。普及を進めてもらいたい。

 ――基本計画には、診断時からの緩和ケアについても強調されている。

 中川 緩和ケアについて、“終末期の医療”“体の痛みを和らげるもの”というイメージを持つ人が多いが、それだけではない。むしろ、がん告知を受けた時の精神的サポートが重要だ。

 私自身も、がん患者の一人だが、40年近くがん専門医をやってきたにもかかわらず、がんと知った時には相当のショックを受けた。

 がんと診断されてから1年以内の自殺リスクが20倍になるというデータもある。医療機関はもちろん、社会全体で患者や家族を支える仕組みが求められている。

■かじ取り役を担う公明

 ――今後、公明党に期待することは。

 中川 公明党は、これまでがん対策基本法の制定、そして第1期から第4期までの基本計画も全て主導してきた。

 国会質問を見ても、がん対策について的を射た質問をしているのは公明党しかいない。まさに日本のがん対策を正しい方向に導く“かじ取り役”を担っているのが公明党だ。

 がんの年齢調整死亡率は下がり続けており、日本のがん対策は着実に進んでいるが、まだ多くの課題が残っている。今後も、がん対策の強化・充実に手を緩めることなく取り組み続けてほしい。

 なかがわ・けいいち 1960年生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部放射線医学教室入局。東京大学医学部附属病院放射線科准教授、同緩和ケア診療部長などを経て現職。厚生労働省「がんの緩和ケアに係る部会」座長、同「がん対策推進企業アクション」議長。

■公明が基本法制定をリード

 1981年以来、日本人の死因のトップに君臨し続ける、がんから国民の命を守るため、公明党は一貫してがん対策に総力を挙げてきた。

 公明党は2005年、党内に専門チームを設けて、精力的に視察や意見交換を実施。①適切な緩和ケアの提供体制②放射線治療の推進と専門医の育成③がん登録の実施――などを盛り込んだ党独自の法案要綱骨子を取りまとめ、06年の「がん対策基本法」制定をリードした。

 同法に基づき、政府が国としてのがん対策を総合的・計画的に定めるのが「がん対策推進基本計画」だ。公明党は同計画においても、その時々の課題に合わせた改定が行われるよう尽力。今回の第4期計画にも、公明党の主張が随所に反映された。 




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