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2021.4.13.(火)

がん患者、とりわけ診断から1年以内に自殺する患者が少なくない。がん患者は大きなストレスを受け「自殺に走りやすい」ことを保健医療福祉従事者はもちろん、すべての国民が認識し、各種の対策に積極的に取り組む必要がある―。

国立がん研究センターは4月8日、こうした内容を盛り込んだ「がん医療における自殺対策のための提言」を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

遺族はもちろん、関与した保健医療福祉従事者のサポートも重要

我が国においては、「がん」が死因第1位を独走しており、国の定める「がん対策推進基本計画」をベースに、医療提供体制の整備、早期発見・早期治療の推進、研究推進、希少がん対策、サバイバー対策など、様々な取り組みが行われています。

そうした中で「がん患者で、自殺率が高い」ことが問題視されており、現行の「第3期がん対策推進基本計画」でも、「我が国のがん患者の自殺は、診断後1年以内が多いが、拠点病院等でも相談体制等の十分な対策がなされていない状況にある。がん診療に携わる医師や医療従事者を中心としたチームで、がん患者の自殺の問題に取り組むことが求められる」とし、▼国は、拠点病院等におけるがん患者の自殺の実態調査を行った上で、効果的な介入のあり方を検討する▼がん患者の自殺防止のために、がん相談支援センターを中心とした自殺防止のためのセーフティーネットが必要であり、専門的・精神心理的なケアにつなぐための体制の構築やその周知を行う―ことを打ち出しています。

国がんでは今般、各種のデータも踏まえて、「がん医療における効果的な自殺対策」として次の5項目の提言を行いました。

(1)がん医療における自殺対策の啓発・教育を推進する
(2)サーベイランス体制を整備し、モニタリングを継続的に行う
(3)自殺の危険因子・保護因子を解明する
(4)病院内外を視野に入れた介入法を検討し、臨床実装する
(5)遺族や保健医療福祉従事者に対する支援法を検討し、提要する

まず(1)では、がんの▼診断・告知▼再発・進行—など想定以上の悪い知らせを受けた際に、また治療に伴う身体症状や機能障害、社会復帰時等に強いストレスが生じ、「精神的な変調に陥りやすい」ことから、「がん患者は自殺行動に至りやすい」という事実を国民に啓発・ 教育していく必要があると強調。その前提として「保健医療福祉の従事者」がこの点を十分に認識するための教育に取り組むことが重要と提言しています。

また(2)は「がん患者の自殺の実態を明らかにするための体制を整備し、自殺や自殺対策 のモニタリングを継続的に実施する」ことを求めるものです。

我が国では「全国がん登録制度」が設けられており、がん患者を対象として「自殺者数」「自殺の多発時期」「自殺の手段・場所」などを把握することが可能となっています。国がんでは、このほかにも▼日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業の事例データ」▽警察庁の統計データ―などを組み合わせて、がん患者の自殺状況を継続モニタリングし、これを「対策の改善」に活かすことが重要と強調しています。

一方(3)では、「自殺の危険因子・保護因子を身体的・心理的・社会的要因を含む全側面から検討する」ことを求めています。

▼がんの経過▼がんの状態▼入院か外来か―など様々な要素が考えられ、これら1つ1つの自殺への寄与率は小さいと考えられるため「複合的に危険因子を判断する」必要があります。

また、全国がん登録などのデータには含まれていない心理的・社会的な要因(▼心理状態▼希死・自殺念慮▼絶望感▼コーピング(ストレスへの対処)▼経済問題▼社会的支援―など)を、各種のデータから収集・分析することも重要です。

国がんでは、「患者の安全を確立するために、適切な方法を用いてこれらの危険因子に絶えず注意を払い、退院後も危険因子や保護因子を適切に評価する手法を確立し、モニタリングしていく必要がある」と訴えています。

自殺の危険因子(がん自殺対策提言1 210408)

また(4)は、自殺対策の介入法の中で「有効性が検証された」ものを臨床実装することを求めるものです。さらに、自殺の95%が「院外」であることから、がん診療連携拠点病院等だけでなく、▼家庭▼診療所▼病院外来▼在宅医療▼地域社会—を含む様々な対象への、がん患者の自殺予防の重要性に関する教育・啓発やゲートキーパー養成を含む様々な介入の開発が必要と訴えます。

そこでは「がんと疑われた時点」から介入していくことが重要なことは述べるまでもありません。

がん自殺対策に向けた介入の対象と内容(がん自殺対策提言2 210408)

さらに(5)では、「遺族」はもちろん、「かかわった保健医療福祉従事者」への心理的支援の必要性を訴えています。

自殺は、「家族や友人、職場の同僚、同級生など」、さらに患者であれば「関連する保健医療福祉従事者」にも大きな影響を与えます。後者では「自責感」「自尊心低下」が生じやすいことから、通常業務に円滑復帰できるような支援プログラムを計画し、産業メンタルヘルスの観点から適切に対応していくことが求められます。しかし、その効果を実証されたものがないため、「効果的な支援方法」の開発に向けた研究を急ぐ必要があるでしょう。

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