[ad_1]

【伊藤香・帝京大学救急医学講師に聞く】(2022年2月14日にインタビュー)

Vol.1 「生命の危機が迫る患者・家族との会話のスキル」伝授したい

Vol.2 「人生の最終段階」日米のギャップに直面

Vol.3 コロナ禍でこそ「緊急ACP」実践の意義

――ではいつ頃から、『緊急ACP』(医学書院)の執筆を考えるようになったのでしょうか。

 医学書院の担当者からアプローチしていただいたのは、ちょうど1年前の今頃です。先ほどもお話しした通り、このコロナ禍で、平時以上に、意思決定の支援が重要になってきていることは、救急医療の現場で感じていました。

オンラインで取材に応じる伊藤氏

 しかし、救急医療や集中治療に従事する医師に対するコミュニケーションスキルの学ぶための教材はなく、「私自身がアメリカで受けてきた研修を紹介することで、その大切さに気付いてくれる方が増えるだろう」「コロナ禍で大変な今の状況だからこそ、出版する意義がある」と考えたのです。「VitalTalk」はもともと腫瘍内科向けとしてスタート。その後、アメリカでは、老年内科、循環器内科などでも使われるようになっていますが、今回の本で救急医療や集中治療の分野に絞ったのも、こうした理由からです。

――Part1は「Vital Talk」の基本的な3つのスキルの紹介で、「よくある対応」と「Vital Talk」のスキルを使った対応例を提示。Part2はその実践という構成で、とても分かりやすい構成です。

 SPIKES=知らせる、NURSE=感情を受け止める、REMAP=治療方針を決める

 これらは、「Vital Talk」の根本の3つの柱です。Part1では、診療領域を問わず、全てに通じる部分について解説、Part2では救急医が遭遇しやすい救急外来、急性期病棟、集中治療室という3つの場面を取り上げて説明しています。臨床医が現場でよく遭遇する、かつ困っているであろうシナリオを取り上げているのも特徴です。

――8項目ある「VitalTalkを深めるためのColumn」で、「代理意思決定」「『できることはすべてしてください』にどう対応するか」など取り上げているのも、第一線におられる先生方ならではの内容です。

 執筆メンバーは、救急医2人、緩和ケア医2人、老年医学1人、家庭医療1人という、さまざまな専門医の混合部隊だからこそ、この内容ができたのだと思っています。特に緩和ケアの先生方は、コミュニケーションが専門スキルとしてお持ちであり、とても詳しく私も参考になりました。

――特にどんな方に本書を読んでいただきたいとお考えですか。また本書の反響はいかがでしょうか。

 医師に限らず、救急医療や集中治療に従事されている方々には、読んでいただきたいと考えています。それ以外でも、どんな医療分野でも、ご自身の患者さんの状態が急激に状悪くなり、重篤な状況に陥ることは誰でも経験されていると思うので、そうした時のためにも参考にしていただけたらと思います。

――最後に、「バイタルトーク日本版」の活動内容などについて、お聞きします(バイタルトーク日本版のFacebookページはこちら)。

 メンバーは全員、アメリカで「VitalTalk」の研修を受けた後に、ファシリテーターの資格を取得した方です。うち一人、大内啓先生は、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院救急部のドクターで、救急領域の緩和ケアを専門に研究されており、「VitalTalk」の創設者の一人であるJames Tulsky先生とも一緒に研究などもされている方です。大内先生が「VitalTalk」を日本に普及させるための準備をしていたところ、私も日本で普及させたいと考えており、一緒に活動を始めたわけです。

 「バイタルトーク日本版」発足はコロナ禍前の2019年で、最初は「VitalTalk」の本部とも連絡を取りながら、テストコースを2回実施しました。日本とアメリカでは、医療文化の違いがあり、「VitalTalk」を文化適用させることが目的でした。

 アメリカ人気質というか、感情を表に出す人が多い一方、日本人はあまり感情を出さないなどの違いがあります。厳しい状況を説明すると、話している間に「うあぁ」と泣き始める人もいれば、反対にショックを受けしまい、黙り込んでしまう人もいます。さまざまなシナリオを作り、模擬患者を用いたロールプレイングを実施し、その結果を評価したりしましたが、「VitalTalk」のスキルはシナリオを問わず、有用であることが分かりました。

 その結果を踏まえ、本格的に研修会を開催していました。アメリカ在住のファシリテーターは、学会などで帰国する際に参加するなどしていたのですが、コロナ禍でそれも難しくなったため、オンライン研修会に切り替えました。開催は日曜日で1回3時間、2週連続で行う計6時間の研修です。Facebookに研修の案内を出すと、一瞬でチケットが売り切れてしまいます。6人のスモールグループに分かれてワークショップを行うため、1回の参加者は12人と小規模のためだと思いますが、相応のニーズがあるとも受け止めています。

 現在のところ、日本版のファシリテーター育成のためのシステムが整っていないので、「VitalTalk」の文化適用も考えつつ、ゆっくりと普及させていきたいと考えています。私自身、「VitalTalk」の研修に用いたシナリオは、とても臨床に即したものだったので、本当に心に刺さったというか、次の日から実践に使えるスキルで、非常に役に立ちました。「VitalTalk」は、さまざまな分野で有用なスキルであり、私自身は集中治療の領域を中心に普及に貢献できればと考えています。

【伊藤香・帝京大学救急医学講師に聞く】(2022年2月14日にインタビュー)

Vol.1 「生命の危機が迫る患者・家族との会話のスキル」伝授したい

Vol.2 「人生の最終段階」日米のギャップに直面

Vol.3 コロナ禍でこそ「緊急ACP」実践の意義

[ad_2]

Source link

コメントを残す