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  • 肝毒性のため臨床試験を中止したのち、TAK-994プログラムの開発を続行しないことを決定

  • ナルコレプシータイプ1の患者さんにおいて、経口オレキシン2受容体作動薬がプラセボと比較し、全ての用量において日中の覚醒を統計的に有意に改善し、1週間あたりのカタプレキシー発現率を低下または消失した

  • 試験データより、オレキシン2受容体がナルコレプシータイプ1の治療薬の開発に有望な標的であることが示された

  • 当社は今後も複数のアセットからなるオレキシンフランチャイズの開発を推進

当社は、本日、ナルコレプシータイプ1(NT1)の患者さんを対象としたオレキシン2受容体(OX2R)作動薬であるTAK-994の臨床第2相試験データがThe New England Journal of Medicine 誌に掲載されましたのでお知らせします。本データは、NT1患者さんにおける経口オレキシン作動薬の臨床データとして初めて発表されたものです。7月27日号に掲載された論文Go to https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2301940?query=featured_homeの表題は、“Oral Orexin Receptor 2 Agonist in Narcolepsy Type 1”(NT1における経口OX2R作動薬)です。

TAK-994試験の治験責任医師の一人であるフランス・モンペリエ大学Gui de Chauliac病院神経科睡眠覚醒障害センター長のYves Dauvilliers医師は、「ナルコレプシーは、オレキシン(ヒポクレチン)と呼ばれる神経ペプチドの不足や欠乏が原因で生じる慢性神経疾患で、ナルコレプシーの患者さんには大きなアンメット・メディカル・ニーズがあります。現在、多くのNT1患者さんは、日中の過度の眠気やカタプレキシーの対症療法として複数の治療薬を使用していますが、いずれの治療薬もこの疾患の根本的な原因を標的とはしていません。本試験は、ファースト・イン・クラスのOX2R作動薬であるTAK-994を他のナルコレプシー治療薬と比較する試験ではありませんが、覚醒に関する客観的指標、日中の眠気に関する自己報告評価やカタプレキシーの頻度に対する本剤の有効性は著しいものでした。しかしながら、TAK-994は肝毒性を伴うため、忍容性の高い、新たなOX2R作動薬の試験が強く望まれています」と述べています。

TAK-994-1501臨床第2相試験について

NT1と診断された18~65歳の患者さんを無作為化し、TAK-994の30 mg群、90mg群、180mg群、またはプラセボ群に割り付け、治験薬を1日2回投与しました。

  • 主要評価項目は、覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test, MWT)による平均睡眠潜時(範囲: 0~40分、正常:20分以上)のベースラインから8週目までの変化量としました。

  • 副次評価項目には、エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale, ESS)スコア(範囲: 0~24、正常:10未満)の変化量、1週間あたりのカタプレキシー発現率(Weekly Cataplexy Rate, WCR)、および治験期間中に治療下で発現した有害事象も設定しました。

臨床第2相試験の治療を完了した患者さんについては、継続投与試験への参加を可能としていました。なお、本試験は、早期中止に至ったこと、試験参加者が少数であったこと、試験から脱落した患者さんが多く、データ欠測例が多かったこと等の制約があります。本試験は、一部の患者さんに肝毒性が認められたため、早期に中止となり、ナルコレプシー治療薬としての本剤の開発は続行しないこととなりましたが、今回検討した標的は今後も開発すべき治療標的となり得ることが示されました。当社は、本剤とは別の経口OX2R作動薬について、ナルコレプシーを対象疾患とした第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験を2試験、実施中です。

有効性の結果

試験に参加した73名の患者さんのうち、17名はTAK-994の30 mgを1日2回、20名は90 mgを1日2回、19名は180 mgを1日2回、17名はプラセボを1日2回服用しました。

  • 主要評価項目の結果:MWTによる平均睡眠潜時の8週目までの変化量は患者さんの56%で得られ、変化量の最小二乗平均値は、プラセボ群 -2.5分、30 mg群は23.9分、90 mg群は27.4分、180 mg群は32.6分でした(プラセボ調整後の最小二乗平均値はそれぞれ26.4分、29.9分、35.0分、いずれの比較ともp<0.001)。

  • 副次評価項目の結果:ESSの8週目までの変化量は患者さんの58%で得られ、変化量の最小二乗平均値は、プラセボ群 -2.1、30 mg群は-12.2、90 mg群は-13.5、180 mg群は-15.1でした(プラセボ調整後の最小二乗平均値はそれぞれ-10.1、-11.4、-13.0)。8週目のWCRは患者さんの53%で得られ、1週間あたりの発現率の推定値は、プラセボ群5.83、30mg群は0.27、90mg群は1.14、180mg群は0.88でした(プラセボに対する発生率比はそれぞれ0.05、0.20、0.15)。

TAK-994の投与を8週間受けた患者さんの大部分では、MWTで測定した睡眠潜時が正常閾値(20分以上)を上回りました。 ESSでも同様の結果が得られました。

安全性の結果

TAK-994が投与された患者さんのうち、44名(79%)で有害事象が現れ、最も頻度が高かった有害事象は尿意切迫と頻尿でした。有害事象の発現例数はTAK-994投与例のほうがプラセボ投与例より多く、TAK-994の用量が高いほど発現例数が多く、重症度が上がる結果が得られました。ほとんどの有害事象は軽度でした。8名はアラニントランスアミナーゼ (ALT)および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が事前に設定した被験者ごとの中止基準を上回り、そのうち3名(TAK-994 90 mg群 1名、TAK-994 180 mg群 2名)はHy’s Lawの基準(ALT/ASTの正常値上限の3倍を超える上昇とビリルビンの正常値上限の2倍を超える上昇)に該当する変化が認められました。これらは薬剤起因の肝毒性を示唆し、結果として試験の早期中止に至りました。発現例に特異的な危険因子は認められませんでした。現時点での仮説として、TAK-994による薬物性肝障害は反応性代謝物に起因し、オレキシン受容体はヒトの肝細胞や大部分の免疫細胞には発現していないため、標的に対するOX2R活性化作用による可能性は低いと考えられています。

当社のニューロサイエンス疾患領域ユニットヘッドであるSarah Sheikhは、「当社はオレキシンの研究開発のリーダーとして、TAK-994の臨床試験から得た学びをオレキシンの生物学的特性の深い理解に役立て、現在進めている複数のオレキシン作動薬候補の研究開発を進めてまいります。TAK-994の臨床試験に参加いただいた患者さん、医師、施設スタッフの皆様に感謝申し上げます。私たちはナルコレプシーをはじめとする過眠障害と共に生きる方々に革新的な治療薬を開発し、お届けできるよう、今後も努力してまいります。また当社は、この機序が役立つ他の適応症の検討も進めてまいります。現在開発中のオレキシンプログラムには、経口OX2R作動薬である TAK-861と 静脈内投与のOX2R作動薬であるdanavorexton(TAK-925)などがあります。TAK-861は現在、臨床第2相試験が2試験行われており、ナルコレプシータイプ1(NCT05687903Go to https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05687903?term=TAK-861&draw=2&rank=3)およびナルコレプシータイプ2(NCT05687916Go to https://clinicaltrials.gov/search?term=NCT05687916)を対象としています。danavorexton(TAK-925)については、全身麻酔後の閉塞性睡眠時無呼吸の患者さんを対象とした臨床第2相試験(NCT05814016Go to https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05814016?term=danavorexton&draw=2&rank=1)を実施中です」と述べています。

武田薬品について

武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献することを目指しています。消化器系・炎症性疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、ワクチンといった主要な疾患領域および事業分野において、革新的な医薬品の創出に向けて取り組んでいます。パートナーとともに、強固かつ多様なパイプラインを構築することで新たな治療選択肢をお届けし、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。武田薬品は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。2世紀以上にわたり形作られてきた価値観に基づき、社会における存在意義(パーパス)を果たすため、約80の国と地域で活動しています。詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。

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