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がん患者に見られる代謝異常「がん悪液質」。食べているのに、筋肉の量が減ってやせていく。歩けなくなるほど衰弱して命に関わるケースも。これまで有効な薬剤がなかったが、四月に国内初の治療薬「アナモレリン」(商品名・エドルミズ)が、小野薬品工業から発売された。対象は非小細胞肺がんと胃がん、膵臓(すいぞう)がん、大腸がんの患者で、期待が高まっている。 (編集委員・安藤明夫)
病気などで食事が十分に取れない人や高齢者が慢性的な「飢餓」状態になることは少なくない。しかし、京都府立医科大教授の高山浩一さん(59)=呼吸器内科学=は「悪液質と、栄養不足の飢餓は違う」と指摘する=写真。
体重や脂肪組織が減少するのは同じだが、悪液質は体を動かす骨格筋も減るのが特徴だ。加えて、炎症が起きていることを示す炎症タンパク質の合成、安静時のエネルギー消費量は増えることから=表、体重や筋肉の減少が加速。食べているのにやせる上、食欲も落ちる。がんに対抗するために体内で起きるさまざまな炎症反応が原因の一つと考えられ、進行に伴って深刻な栄養不良に結びつく。
半年間で5%以上の体重減少と全身の筋力低下などが診断の目安。フランスのがんセンターの千五百四十五例を見ると、膵臓がんや胃・食道がん、肺がんの過半数で悪液質が見られた。また米国の四施設の五百例を分析したところ、直接の死因の23%を悪液質が占め最多だった。患者の生活の質(QOL)に関わるだけでなく、命を左右する問題だが、治療法はなかった。
エドルミズは「空腹ホルモン」とも呼ばれるグレリンと同様の働きをする飲み薬だ。食欲や成長ホルモンの分泌を促し、体重、筋肉の量を増やす。国内の治験では、肺がんの大半を占める非小細胞肺がんの悪液質患者のうち、エドルミズを十二週間服用した群では脂肪を除いた体重が平均で一・三八キロ増えた。大腸がん、胃がん、膵臓がんの三つの消化器がんでも63・3%で体重の維持・増加が見られた。一方で筋力の改善が認められた例はなかった。
患者の生活の質向上を目指す日本がんサポーティブケア学会の評議員でもある高山さんは「悪液質は、運動や栄養の指導も合わせ、多職種のチームで向き合うことが大事」と指摘。その上で「エドルミズの登場で、がんに伴う痛みやつらさを和らげるがんサポーティブケアが大きく変わる可能性がある」と期待する。
がん医療の現場でも手応えを訴える声が上がる。
愛知県がんセンターで治療中の胃がんの六十代男性は、最初に使った抗がん剤が効かなくなった後、食欲不振に陥って体重が減少。治療への意欲も低下した。しかし、エドルミズを服用したところ、短期間で食欲が出て体重も回復。気力が戻り、新たな抗がん剤治療を始めることができた。
薬物療法部長を兼ねる室圭副院長(55)によると、これまでは悪液質の患者が家族らから「もっと食べなきゃ」と責められ、落ち込む例があったという。「治療への意欲を引き出す効果も期待できる」と話す。
適応の対象となった四つのがん以外でも悪液質は見られる。室さんは「現場のデータを基に、対象となるがんの種類を広げることも考えてほしい」と話す。
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