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 病を抱える人の心身の苦痛を和らげ、生活の質(QOL)の向上を目指す「緩和ケア」。これまで国内では、終末期のがん患者への取り組みと考えられがちでしたが、最近は、心不全や呼吸器疾患、認知症など、がん以外の病気でも注目されています。(影本菜穂子)

日本はがん中心

 緩和ケアは20世紀の後半、痛みや苦しみが強い終末期のがん患者らが安らかに過ごす施設「ホスピス」の広がりとともに登場しました。

 世界保健機関(WHO)は2002年、緩和ケアの対象を「生命を脅かす病に直面した患者と家族」と定義。痛みなど身体的な苦痛に加え、心理的、社会的なつらさや、死と向き合う苦しみを早期に見いだし、和らげるケアと位置づけました。この頃から、欧米では、がん以外の患者にも行われるようになりました。

 WHOによると、緩和ケアが必要な成人を疾患別でみると、がんは3分の1で、ほかは心不全や慢性 閉塞へいそく 性肺疾患(COPD)などが占めています。認知症の人へのニーズが急増するという研究もあります。

 一方、国内では、緩和ケアの対象は、がんという考え方が根強くあります。ケアが手厚い「緩和ケア病棟」の入院の対象が主にがん患者に限られてきたことなどが背景にあります。

 しかし、高齢化が進む中、がん以外の病気での必要性が高まり、国は18年、末期心不全患者に行う緩和ケアの一部を、公的医療保険の対象に加えました。

 緩和ケアに詳しい山口崇さん(神戸大病院特命教授)は「がん以外の患者に緩和ケアを進める動きが最近、ようやく広がってきました」と話しています。学会などが心不全や呼吸器疾患、認知症などの分野で提言や指針を出しています。

経過見通し難しく

 がん以外の患者への緩和ケアは、病気の経過を見通しにくい特徴があります。がんは比較的、最期まで身体機能が保たれるのに対し、心不全などは、悪化と回復を繰り返し、認知症や老衰では、ゆっくりと身体機能が低下するとされます。自分がどの段階にいるのか認識しにくいため、いざという時の対応を普段から繰り返し話し合っておく「アドバンス・ケア・プランニング(ACP=人生会議)」が特に重要です。

 呼吸困難などの症状の緩和には、もとの病気への治療が効果的とされ、緩和ケアと並行して行われます。がんと同様、必要な時は医療用麻薬も使われます。

 東京都の女性(65)は昨年、神経難病を患う72歳の夫を自宅で 看取みと りました。4年間の療養中、夫婦は、梶原診療所(東京都北区)医師の平原佐斗司さんと「自然に任せたい」と話し合いました。肺炎を繰り返し、亡くなる1週間前、呼吸状態が急に悪化。酸素の吸入や医療用麻薬の使用で息苦しさが緩和され、眠るように亡くなりました。「穏やかで夫らしい最期でした」と女性は話します。

 がん以外の患者への緩和ケアでは、緩和ケア病棟の入院対象ではない、医療用麻薬の多くが保険の適用外で、必要な時に使いにくい――といった課題があります。平原さんは、「がん以外の患者でも亡くなっていく人の苦痛を取り除ける体制作りが求められます」と指摘しています。

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