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乳管の細胞1個が癌になってから10年ほどかかってしこりを作る~それでもまだ早期のことも~
乳がんは母乳をつくる乳腺にできるがんで、おもに母乳を運ぶ経路である乳管の壁から発生します。乳管の細胞が傷を受けたり、老化したり、炎症を起こすなどダメージを受けたとき、人の身体には周囲の細胞を増殖させ、修復する働きがあります。本来は修復が終わると増殖はそこで止まるべきなのですが、まれに止まらずに増殖し続けることがあり、これが乳がんのはじまりではないかと考えられています。
ほとんどの乳がんは進行がゆっくりで、10年くらいかけて乳管の内腔を埋めて更に壁を破って乳管外に顔を出ししこりを作っていきます。そのため、乳がん検診を受けてもわからない潜伏期のような時期が長く、がん細胞が乳管の壁を破って初めて、「硬いしこりがある」「いつもと違う」と感じることになります。
どんな人がなりやすいの?~閉経後の肥満や飲酒習慣、家族歴に注意~
閉経後の肥満や閉経状態に関わらず飲酒習慣、家族に乳がんや卵巣がんの人がいる場合、乳がんになる確率が高いといわれています。他にも閉経前であれば、平均身長よりも高い方、年齢に関わらず良性腫瘍があると診断された方、30歳以前の授乳歴がない方などがややなりやすい傾向にあります。勿論、こうした方々の全員が乳がんになるわけではありませんし、該当する要素がなくても乳がんになる人もいます。
男性も乳がんになるんですか?~稀にあり、注意が必要~
2018年に乳がんにかかった女性は93,858人。一方、男性は661人と非常に少なく、全体の0.007%に過ぎません(国立がん研究センター「がん統計」より)。しかし、男性は乳がん検診がありませんし、「仕事が忙しい」「どの診療科に行けばいいのかわからない」「まさか」「恥ずかしい」などの理由で受診に積極的になれないかもしれません。胸にしこりやひきつれを発見したときは、男性もためらうことなく外科や乳腺科を受診することをおすすめします。
なぜ早期発見が重要なの?~早く発見すれば、治るがんです~
乳がんは40代~60代の女性のり患率が高いのですが、多くは痛みがないうえに元気に動き回ることもでき、また仕事や育児・介護などに追われて、つい検診を後回しにしがちです。しかし、定期的に検診を受けることで早期に発見し、治療をスタートすれば、命を失うことが稀ながんになりました。ちなみに、がんの大きさが2cm以下でリンパ節や他の臓器に転移していないステージⅠの場合5年生存率は99.3%に上ります。ところが、離れた臓器への遠隔転移があるステージⅣでは39.3%まで下がってしまいます(国立がん研究センター調べ)。
また、ステージごとに必要な治療費に大きな差があり、早期に発見すればするほど経済面でも負担が少なくすみます。
早期発見のための習慣 ~セルフチェックはどうすればいい?~
乳がんは自分で発見できる可能性がある数少ないがんのひとつです。ぜひセルフチェックを習慣化し、早期発見につなげましょう。
セルフチェックでは、お風呂に入る前などに鏡の前で上半身裸になり、両腕を上げて乳房にしこりやえくぼ、ひきつれなどがないか観察します。さらに身体を洗うときに、石鹸をつけながら親指以外の4本の指の腹で乳房をまんべんなく押し撫でるように触れ、皮膚の下に硬いものがないか調べます。乳房は膨らんでいる部分のみならず、上は鎖骨のそばまで、腋の下のラインは、反対の手を伸ばして中指の先が届く範囲は全てですので、背中に近い部分まで触るようにしましょう。
セルフチェックは月1回程度で充分です。生理が終わり、ゆっくりお風呂に入れるタイミングだと胸の張りなども少なく、チェックに向いています。閉経後の方なら、毎月1日や月末など覚えやすい日を決めて、続けてみましょう。
ちなみに、セルフチェックには2つの意味があります。まず、胸への関心を持続させることです。たいがいの乳がんは痛みがないため、仕事や育児や介護で多忙だと、つい関心が薄れがちになります。胸への関心が保たれると、乳がん検診の習慣がつきやすくなります。もう一つは、自身で乳房の変化(しこりやひきつれなど)に気づく時期が早まるかもしれないことです。検診と検診の間に発見できるケースもあるからです。
乳がん検診ってどんなもの? ~視診・触診・マンモ・超音波検査~
乳がんの集団検診では、マンモグラフィが基本ですが、年齢や乳腺の状態によっては超音波(エコー)検査が行われている自治体や職場もあります。乳がんの触診は、例えるなら分厚い布団の下にあるグミや使い古して変形した消しゴムなどを見つけるようなもの。皮膚に近い位置にがんがあれば自己触診で見つけやすいですが、奧の方にあれば、誰の触診でも小さいうちに見つけることはできないかもしれません。よって、検診に触診は必須ではなくなってきました。マンモグラフィ(と、場合によって超音波エコー検査)が施行されています。
マンモグラフィは2枚のアクリル板の間に乳房を挟み、薄く伸ばして撮影する検査です。日本人女性は欧米人に比べて高濃度乳房(デンスブレスト)が多く、病変が正常な乳腺や脂肪に隠れてしまい、発見が難しい場合があります。ただし、加齢とともにX線の透過性がよくなり(柔らかくなり)、病変を発見しやすくなるため、マンモグラフィは50歳以上の方に特に有効であることが知られていますが、40歳代に罹患のピークがあるため、40歳以上には欠かせない検査です。
超音波エコー検査は乳房の表面に超音波を発生する機器を当て、その反射の様子を画像で確認するもので、マンモグラフィで発見しづらい50歳未満に勧めたい検査です。よって40代の女性にはマンモグラフィーとの併用が有効ではないかと考えられています。またマンモグラフィーが推奨されていない30代以下の女性に用いられています。しこりの性状や大きさ、場合により周囲のリンパ節の状況を調べます。各種検査でがんの疑いがあると診断された場合は、局所麻酔下に太針で組織を採取して顕微鏡下で調べる針生検を行い、診断を確定します。
治療はどんなふうに進めるの? ~局所療法(手術±放射線治療)と薬物療法が2本柱~
乳がんの治療法は、火種の治療である局所療法(手術もしくは、手術と放射線治療)、そして飛び火を抑える全身療法(薬を用いた治療で、必ずしも抗癌剤ではなく、病気の性質とステージに合わせた薬物療法)の2つです。乳房の手術には乳房を残す乳房部分切除術(乳房温存手術)、乳房を全て切除する乳房全切除術、腋のリンパ節に対しては、転移があるかどうか調べる目的のセンチネルリンパ節生検と明らかに転移している場合に行う腋窩(えきか)リンパ節郭(かく)清(せい)があります。また、超早期発見とみなされる場合は、生検も行わずに経過観察になる場合もあります。乳房を残すかどうかは本人の希望に加えて、がんの大きさや位置などにもよるため、主治医とよく相談し、決定する必要があります。
がんの状態によっては、手術前に薬物療法(この場合、ほとんどは抗癌剤を含む薬物療法になります)を行うこともあります。
どこを受診すればいいの?~専門性の高い乳腺(外)科・乳腺センターを選ぶ~
ひと昔前までは外科の中に乳腺外科の担当医がおり、乳がんもしくはその疑いがある患者さんを診るのが一般的でしたが、最近では「乳腺科」や「乳腺外科」「乳腺センター」など専門外来が増え、乳がんの専門家がチームで診療に携わっています。
順天堂大学医学部附属順天堂医院では、他の大学病院に先駆けて、2006年に「乳腺センター」を開設しました。乳がんの外科系専門医はもちろん、手術後の乳房再建を担当する形成外科医、薬物療法の専門家である腫瘍内科医や薬剤師、遺伝相談の専門家である遺伝カウンセラー、超音波技師、リンパ浮腫専門の看護師、がん専門の看護師などの関連科や部署が患者さんを中心に1か所に集まって診療を行っています。検査や治療に来院された患者さんの動線が短くすみ、また、待合室から目配りが始まり、診察室を出てからも心配りをし、精神的な負担をやわらげています。
乳腺センターURL https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/mammary_glands/
家族ができること ~がん患者家族の3つの役割~
身内が乳がんになると、ご家族も動揺し、「どうすればよいのかわからない」と途方に暮れることがあります。そんなとき、以下に示す「がん患者家族の3つの役割」(これは順天堂医院で長年行った家族教室のまとめとしてチームで作成したもの)です。参考になさってください。
① ある種の責任を果たす
がん治療には一定程度経済面の負担が伴います。治療選択にあたっては、家計の再分配を含めた意思決定の支援をする立場にあるのが家族であり、患者さんの闘病に関して、社会資源の投入や段取りなど、生涯のエスコート役を果たして頂きます。
② 「いつもどおり」の生活を提供する
がんを患っているからといって腫物に触るように接するのではなく、折に触れ「いつもどおり」に接することが、患者さんの心の安定につながります。
③ 医療者との仲介を役を担う
医師や看護師、薬剤師など、医療者と接する機会にできる限り立ち会い、患者さんと一緒に説明を聞きます。本人が平常心で聞けていなかった部分も冷静に聞き、家族だけの時間に確認し合うなども、患者さんの支えになります。また、患者さんが来院できないときは代わりに来院し、医療者の説明を聞くのも家族が果たせる大きな役割です。
職場の人ができること~直属の上司が果たす役割~
がん治療を続けるには治療費が必要なばかりでなく、これまでの生活を続けるためにも、仕事はぜひ継続したいところです。また、仕事に生きがいを感じている人にとって、闘病中にも、そして闘病後にも働ける職場があることは精神的な支えになります。
患者さんが休みを取る際、職場の全員に個人情報である“がん”という病名を伝える義務はありませんが、直属の上司と、産業医がいる職場であれば産業医には、治療の為に仕事ができない日がどのようにあるのか、ないのかを伝えておく必要があります。また診断書を用意する必要がある場合は、病名を告げることになります。術前術後を通じて、どうしても治療のために仕事を休む必要が生じるため、上司には「〇月〇日から〇月〇日まで治療のために休みます」など、事前に伝える必要があります。その際、用意しておきたいのが「治療カレンダー」で、書き込みスペースのある大きめのカレンダーに、まず主治医と本人が通院・入院予定日を書き込みます。その後で仕事に支障をきたすかもしれない日を含めて、上司と産業医にカレンダーを見せて伝えるといいでしょう。
乳がんに限らず、がんを理由に退職する人は約3割に上っていると言われ、働き続けたい患者さんにとっても、貴重な人材を失うかもしれない職場にとっても、退職を少しでも減らしたいところです。患者さんの休みのスケジュールをできる限り事前に把握する、時折休んだり体力が低下していても続けられる業務を用意するなど、直属の上司が果たす役割はとても大きなものです。
医療の進歩とともに、乳がんも治る人が大半の時代になってきました。今や日本人女性の2.5人に1人がどこかしらのがんになる時代であり、乳がんは女性のり患数がもっとも多いがんでもあります。また、人生100年時代を迎え、乳がん以外にもさまざまな病気にかかる可能性も高まりつつあります。乳がんになったとき、「がんになってしまった!」「私が何か悪いことをしたのだろうか」と、振り返るばかりで前向きになれない方がいますが、がんになるのは何も特別なことではありません。「長い人生、そんなこともあるよね」と受け流せる人が、がんとつきあいながら、しっかり生きていける人のような気がします。病気であることにとらわれ続けるのではなく、家族や友人や医療者をうまく利用して、折角授かった命と時間を、やりたいことに貪欲に挑戦するために使っていただきたいものです。
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