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人生100年時代、「死」と距離が生まれてしまった現代では、自分の死について考える機会がめっきりと減ってしまいました。ですが、死は誰にでも確実に訪れます。50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』の著者、高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏が、35年以上の高齢者診療で辿り着いた「極上の死に方」について、新刊『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)より解説します。
「85歳を過ぎて」がんのない人はいなかった
高齢者が恐れる病気の一つは、やはりがんでしょう。1981年以来、日本人の死因のトップはがんであり、罹患率は70代から急増しています。
国立がんセンターの統計によると、60歳男性では7.8%、女性では12.4%なのが、70歳では男性21.9%、女性21.2%に増え、80代になると男性43.6%、女性32.8%に跳ね上がります。
しかし私は、高齢者には、がんはなるべく手術をしない、化学療法なども受けないことをすすめています。
私が勤めていた浴風会病院の病理解剖で、85歳を過ぎてがんのない人はいなかったとお話ししたと思います。
死因ががんだった人は、そのうちの3分の1程度なので、残りの人はがんを知らないまま「飼っていた」ということです。高齢になるほどがんの進行は遅いといわれますが、確かにその傾向はあると思われます。
手術には成功しても…
繰り返しますが、そもそもがんというのは、手遅れになるまで自覚症状が出ないことが多いように、実はそんなに痛かったり苦しかったりするものではありません。いよいよというときまでは案外、普通に暮らせるものです。とくに高齢者の場合は、そういう印象があります。
私はこれまで高齢者でがんの手術をした人と、していない人を数百人単位で診ていますが、手術には成功しても、体力が低下しておいしいものも食べられずに痩せ細り、一気に見る影もなくショボくれたお年寄りになってしまうケースはめずらしくありません。
化学療法を受けても相当に体力が落ちて、亡くなるまで不調が続くということもよくあります。
高齢でがんになったら、かなり体力が衰えることを覚悟で手術を受けるか、それとも、がんと共生しながら栄養をつけ免疫力を上げて残りの人生を元気に暮らすか、をよく考えて選択することが重要です。
もう一つ、不安に振り回されるよりはソリューション(問題解決法)についての情報を集めることをおすすめしたい。
日本人はがん検診、健康診断は頻繁に受けるのですが、がんだとわかったら、どこの病院で治療を受けるかを下調べする人はほとんどいない。コロナも同じで、なったら怖い、怖い、怖いという予期不安ばかりがふくらむのです。
がんの手術を受けるにしても、体力を落とさないために、がんだけ切り取ってまわりの臓器は切らない手術をお願いする、という手だてもないわけではありません。しかし、それができる病院は、事前に探しておかないとまず見つからないでしょう。
先手を打っておけば、検診でがんを見つけた病院で、治療をすすめられ、不本意な医療を強制されるリスクは大幅に下がるはずです。何も調べず、ただ不安をふくらませるよりも、きちんと勉強し、解決法を探しておくほうが賢明です。
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