デジタル病理支援ソリューション「PidPort」を提供するメドメイン株式会社 (本社:福岡県福岡市、代表取締役CEO:飯塚 統、以下「メドメイン」)は、Deep Learning(深層学習)を用いることで、皮膚の病理組織デジタル標本における悪性黒色腫の鑑別を可能にする人工知能の開発に成功いたしました。
本研究成果のポイントは、深層学習を用いることで、日本において症例数が圧倒的に少ない「希少がん」である皮膚悪性黒色腫を鑑別できるようになった点です。また、スピッツ母斑など悪性黒色腫と鑑別を要する疾患との鑑別は不十分な点があるものの、タイルレベルの評価を行うことで、悪性黒色腫と鑑別ができたものについては精密に悪性黒色腫細胞の浸潤範囲を評価することが可能になりました。
本研究内容が、MDPI(https://www.mdpi.com)が発行するCancersに掲載されたことをお知らせいたします。

(論文のURL:https://www.mdpi.com/2072-6694/15/6/1907

 

■本研究成果の概要
 皮膚病理組織デジタル標本において悪性黒色腫を鑑別する人工知能の開発に成功いたしました。
 
 ■本研究の背景
 皮膚に発生する悪性黒色腫はメラノサイト由来の悪性腫瘍(がん)であり、悪性腫瘍の中で最も予後が悪いもののひとつとされております。皮膚悪性黒色腫の多くは、褐色から黒色の色素斑(シミ)や腫瘤として皮膚の表面に出現します。一般的に、「形が左右非対称」、「輪郭が不明瞭」、「色むらがある」、「大きさが6mm以上」、「大きくなる」、「色・形・硬さなどが変化する」といった特徴がみられます。発症には人種差があり、欧米人は発症の頻度が高い一方で、日本人は10万人あたり1〜2人と頻度が低いため「希少がん」として扱われております。
 
 悪性黒色腫は、肉眼的な変化で良性の母斑(ほくろ)や色素斑と区別がつく場合が多く、ダーモスコピー検査によってより正確な診断が可能です。一方、肉眼的検査で診断できない場合は、病変の全てあるいは一部を外科的に切除し、病理組織検査を行う場合があります。病理組織検査では、良性の母斑など鑑別診断を要する病変との差異を明らかにしていく必要がありますが、日本では症例数も少なく、悪性黒色腫の診断を専門とする病理医の数も限られております。悪性黒色腫を含む「希少がん」は数が少ないがゆえに、診断を含む診療上の課題が他のがんに比べてはるかに多く、革新的な診断・治療法の開発が望まれております。
 
 以上の臨床的背景から、本研究では、皮膚病理組織デジタル標本において、悪性黒色腫を鑑別することが可能な人工知能を深層学習を用いて開発することにいたしました。
 
 ■本研究の内容
 国内の施設から提供を受けた皮膚病理組織標本をデジタル化し(WSI: Whole-Slide Image)、複数の病理医によるアノテーションデータを含む教師データを作成いたしました。今回の開発に利用したデータ数はWSIで皮膚悪性黒色腫は78枚、悪性黒色腫以外の病変(母斑、母斑以外の良性病変など)は88枚です。悪性黒色腫は日本では希少がんであるため、収集できた症例数に限りがあり、従前弊社で開発してきた胃や大腸の人工知能モデルに比べ、圧倒的に少ない症例数での開発となりました。皮膚悪性黒色腫78枚のうち38枚を教師データとして使用するとともに、悪性黒色腫以外の病変88枚のうち38枚を教師データに使用いたしました。今回の人工知能開発では、従前の開発に加え、悪性黒色腫の浸潤範囲を評価するために、微小なタイルレベルでの評価も行いました。
 
 ■本研究の成果
 病理医のアノテーションデータを利用した完全教師あり学習を弱教師あり学習に加えて行ったところ、WSIレベル(スライドガラス1枚当たりの評価)において、0.825のROC-AUC値が得られました。また、悪性黒色腫の浸潤範囲を評価するために分割したタイルレベルでの評価を行ったところ、ROC-AUCが0.936という高値が得られました。さらに、ヒートマップにより表示された人工知能が識別した悪性黒色腫の領域については、複数の病理医による検証の結果、妥当であることが確認されました。一方で、スピッツ母斑や青色母斑など、一部の鑑別が難しい母斑については偽陽性がみられ、極めて診断が難しい表皮内悪性黒色腫(Melanoma in-situ)については偽陰性となるなどの課題が残りました。

■今後の展望
 今回開発した深層学習型人工知能モデルの検証を、複数施設ならびに大規模症例にて進めてまいります。本研究で生じた偽陽性や偽陰性については、症例数を増やして追加学習させることで改善されることが予測されるため、継続して研究開発を進めてまいります。
 
 本研究により、症例数が少ない「希少がん」においても人工知能の開発が可能になる方途が得られたため、引き続き他の希少がんについても人工知能の研究開発を行い、希少がんの臨床に貢献してまいります。
 
 ■原著論文
 ▼論文タイトル:Deep Learning Approach to Classify Cutaneous Melanoma in a Whole Slide Image
 ▼日本語訳:皮膚病理組織デジタル標本における悪性黒色腫を鑑別する深層学習を用いた人工知能の開発
 ▼DOI: https://www.mdpi.com/2072-6694/15/6/1907
 
 ■著者・所属
 <栃木県立がんセンター 病理診断科>
 阿部 信
 <東京品川病院 病理診断科>
 中野 盛夫
 <メドメイン株式会社>
 常木 雅之、Meng Li
 
 ※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものです。
 
 ■会社概要
 【会社名】メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)
 ※経済産業省 J-START UP 選出企業  https://www.j-startup.go.jp/startups
 【設立日】2018年1月11日
 【事業内容】医療ソフトウェア・クラウドサービスの企画・開発・運営および販売
 【代表取締役/CEO】飯塚 統
 【所在地】[東京オフィス] 東京都港区南青山2-10-11 A青山ビル2F / [福岡オフィス] 福岡県福岡市中央区赤坂2-4−5 シャトレサクシーズ104
 
 ■各種関連サイト
 【コーポレートサイト】https://medmain.com
 【プロダクトサイト】https://service.medmain.com
 
 ■お問い合わせ先
 メドメイン株式会社 広報担当: pr-m@medmain.com

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