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――「オミクロン株の流行に変わった第7波から、様相が変わってきた」とのことですが、どのように変化したのでしょうか。

 2022年夏の第7波で見られた一つが、患者像の変化です。北見市では、病院や診療所、医師会などの関係者が協力し、ワクチン接種を強力に進め、高齢者を中心にかなり接種が進みました。

 しかし、爆発的に感染者数が増える中で、一部にはワクチン接種をせずに重症化した人がいます。さらに、ワクチン接種をしていても、感染を契機としてコロナ自体は軽症であっても、感染隔離に伴うADL低下により誤嚥性肺炎になってしまったり、基礎疾患の悪化を招くケースが少なくありませんでした。結果的に、オミクロン株では致死率が低くても、感染者数が多かったために、新型コロナ陽性者の死亡者数が増えてしまった印象です(後掲のグラフ1、グラフ2 、表1を参照)。

院長の荒川穣二氏(提供:北見赤十字病院)

 当院の緩和ケア病棟は、オホーツク3次医療圏唯一であり、「絶対に転用しない」方針でした。しかしながらコロナ入院患者の急増により、緩和ケア病棟14床を2022年の8月中旬から9月中旬までの約1カ月間、コロナ専用病棟に切り替えざるを得ませんでした。ただこの時も、「オール北見日赤」の中で、緩和ケア病棟の職員だけは関わってこなかったこともあり、看護師をはじめ、皆がとても協力的かつ積極的に携わってくれました。

 さらに2022年秋の第7波後半から第8波の前半にかけて、今度は初めて院内でクラスターを経験することになりました。9月25日に長期入院患者の陽性が判明、精査の結果、家族感染に起因した職員の関与(食事介助・口腔ケア時に標準予防策が取られていなかったこと)が原因と考えられ、直ちに関わった職員・患者の抗原定量検査を実施、また濃厚接触者と考えた職員の就業制限、患者の隔離を行いました。

 その結果、職員5人、患者2人の感染で、クラスターは最短で制御できました。その後も、第8波の前半11月までに、当院で4病棟(職員・患者を合わせて計5人から計9人の陽性者)、道立北見病院で1病棟のクラスター(計13人の陽性者)を経験しましたが、いずれも最短で制御しました。12月以降は、クラスターの発生はありません。

 ただ第8波では、家族から感染したり、濃厚接触者になったりして勤務できなくなった職員がピーク時では、当院の正職員1192人のうち50人を超えました。この時は残念ながら、緊急以外の入院の一部を制限せざるを得ませんでした。

――高齢者の場合、感染に伴うリスクと、感染隔離等に伴うADL低下、それに伴う誤嚥性肺炎や基礎疾患の悪化のリスク、双方を考える必要があることが分かります。

 グラフ1は第4波から第5波、グラフ2はオミクロン株に変化した第7波から第8波における当院・道立病院の重症度別入院患者数です。オミクロン株では、その感染性の高さから爆発的に患者数が増加し、入院患者も増えました。またコロナ感染症が軽症でも入院、さらに数は少ないのですが死亡する人がいます。表1にコロナ患者の死亡原因を示しますが、ワクチン未接種高齢者が重症化してから入院してコロナ肺炎で死亡した例もありますが、軽症・中等症患者の死因は、感染隔離等に伴うADLの低下、そのことを起点とした誤嚥性肺炎や基礎疾患の悪化に伴う合併症により亡くなっています。また死期が早まったと思われた例(老衰)もありました。

(提供:荒川氏)

――オホーツク3次医療圏には、2022年11月から12月にかけて、DMAT(COVID-JMAT)が入っています。

 COVID-JMATは、保健所と共にクラスターが発生した高齢者施設に入り、対応・支援をされていました。高齢者施設の職員は、感染対策の知識や経験が乏しい場合も少なくありません。そこに支援に入ると、軽症患者であっても施設内で診ることが可能だったり、不必要に隔離することもなくADL低下を防ぎ、結果的に誤嚥性肺炎になるリスクの低減につながること、施設の嘱託医・かかりつけ医への相談体制確立等に関して、今まで得た知見から説明を行い具体的な対応に関して支援しました。

 12月初めにCOVID-JMATが引き揚げた後は、北見保健所管内のCOVID-JMAT活動は当院で引き継ぎ、また感染症指定医療機関をはじめとする7病院以外でも、コロナ軽症者の入院対応を行っていただける病院も増加しました。

面会制限や職員の会食などの緩和は可能か

――政府は、5月8日から新型コロナを感染症法上の5類に変更する方針です。北見日赤では何らかの体制変更はお考えでしょうか。

 今後もコロナ専用病床を作る予定はなく、院内の病棟体制や検査体制を変更する予定はありません。ただ現時点でも幾つか規制は残っているので、どこまで緩和するかが課題です。

 一つは、患者家族等の面会制限です。患者さんの急変時など状況に応じてPPEを着て面会してもらうケースはありますが、現時点でも基本的には面会を制限しています。分娩時の立ち会いも制限しています。コロナ禍前は院内で多数のボランティアが活動していましたが、比較的年齢が高い方が多いこともあり、ボランティア活動も制限しています。

 職員については、職員のワクチン5回接種を原則終えたこともあり、この2月からは少人数であれば職員同士の会食を認めています。また、5類への移行後、濃厚接触者となった職員の対応は、季節性インフルエンザと同等でいいのかなど、どこまで感染対策を緩和することができるのかは検討課題です。

 第8波は収束に向かっているものの、もう1回ピークが来る可能性もある中、5類化に向けて、患者さんにより良い医療を提供するためにもどのように段階的に対策を緩和していくかが課題です。

DNAR確認などACPの推進、患者・家族の理解も必要

――地域全体としての課題はどうお考えでしょうか。5類になれば新型コロナを診る医療機関が増えるとお考えでしょうか。

 医師会の中には、現時点ではコロナ患者を診ていないけれども、ゴールに向けて体制を整備しなければいけないとお考えの先生方がいらっしゃいます。今よりも対応される先生方は増えるのではないでしょうか。自院で診なくても、高齢者施設への支援に入っていただくことで、施設内で対応したり、施設内看取りなども増えてくれば、入院患者を受け入れる病院の負担は相当軽減されます。地域全体で、医療介護、福祉の間で情報共有し、いかに連携していくかが重要だと考えています。

 高齢者施設での対応にあたっては、家族の理解も必要です。DNARの確認を含めたACPを推進することが重要と考えます。施設入所の際にご家族と十分な協議がなされていない場合、特に遠方にいる家族が「入院して、できるだけのことをしてほしい」と考えがちで、入院に至ってしまうケースが一定数あることも事実です。この辺りについて国民の理解を求めていくことも必要です。

――5類化に向けて、現場の医療機関として政府に要望したいことは。

 5月8日を境に、完全にコロナ前の社会に戻るかですが、なかなかそうもいかないと思います。コロナ対応をしつつ、経済を回さなければいけないことは事実です。一方で、次の波が来ないとも限りません。その中でどこまで感染対策の緩和が可能かなど、エビデンスを基に一定の方針、メッセージを、医療関係者や国民に示していただきたいですね。

 日本人は基本的に真面目で、マスク着用も含めて感染対策に取り組み、世界的に見ても低い致死率に抑えてきました。その中で、国民の理解を得つつ、一歩ずつでも、前に進むことが重要だと思っています。

――医療費患者負担の公費負担の扱いについては。公費負担がなくなると受診抑制につながるとの懸念の声もあります。

 それ以前の問題として、地域によって異なる公費負担分の医療機関への支払い方法を再検討する必要があるのではないでしょうか。医療機関として発生届を提出しても患者が申請しないと公費負担分が医療機関に振り込まれなかったりして、病院が患者に確認する手間が発生したり、中には億単位の未収金になっているケースもあると聞いたことがあるからです。

「with/postコロナ」の医療体制こそカギ

――病床確保料や診療報酬上の新型コロナ関係の加算などは。

 まだ分かりませんが、「5類になれば病床確保料はなくなる一方、実際にコロナ患者を診た場合の加算についてはある程度残るのでは」といった話を聞きます。実際にかかった手間、負担に対する加算を残すのは妥当ではないかと考えています。

 あまり細かいことを言っても仕方がなく、それよりも「with/postコロナ」時代を見据え、医療提供体制をどのように構築していくかの方が大事だと思います。

 2024年度からは医師の働き方改革が始まります。北海道の医師少数区域にある地方の病院では、宿日直許可が取得できるかどうかが一つのカギと考えています。取得により労働時間が大きく異なるため、日常の診療と夜間の救急医療体制の維持には重要です。当院でも宿日直許可を取得したのは1975年と古いので、北海道医療勤務環境改善支援センターと協議して取得し直すため、地元の労働基準監督署と話し合いを重ねています。

 第8次医療計画も2024年度から始まります。オホーツク3次医療圏内には2つの医療圏がありますが一体的に動かす構想もあります。全国的にも医師が少ない医師少数区域で、今後も当院が地域の中核病院として機能させるための体制づくりが必要です。この点については、診療報酬も関係してきます。各種点数の算定要件には、設備・人員基準があります。例えば、特定集中治療室管理料を挙げても、都市部の病院ほどにはICUの稼働率は高くはない地方の病院にとっては、看護師等を常時配属しておくのは容易ではありません。地方の病院でも多職種によるチーム医療を推進し、医療の質を確保する病院は少なくないと思います。

 2024年度の診療報酬改定は、介護報酬と障害福祉サービス等報酬とのトリプル改定です。ここでどんなメッセージが打ち出されるか、その動向に注目しています。

新型コロナウイルス特設ページ COVID-19

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