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ヴィクトリア・ジル、科学担当編集委員、BBCニュース

放射線によるDNAのダメージは子どもに遺伝しないことが初めて示された
1986年に起きたソ連(当時)のチェルノブイリ原発事故で被ばくした両親の間に、事故後にできた子どもには、「DNAの追加的な損傷」はみられない――。そんな研究結果が発表された。
この研究では、原発事故後の除染作業に参加した両親の間に生まれた子どもたちについて、初めて遺伝子を調べた。
研究の対象とされたのは、原発事故後の妊娠によって1987~2002年に生まれた人たち。全員について全ゲノム解析を実施した。
その結果、両親の被ばくに関連した変異は見つからなかったという。
この研究は米科学誌サイエンスに掲載された。
画像提供, G Laptev
チェルノブイリ原発の事故後、多くの労働者が除染作業にあたった
英インペリアル・コレッジ・ロンドンのジェリー・トマス教授は、がんや、特に放射線ダメージと関連のある腫瘍の生態を数十年間研究してきた。トマス教授は、今回の新たな研究結果について、「自然発生の放射線と比べると高線量といえる被ばくをした場合でも、将来生まれる子どもには影響がなかった」ことを示す、初めてのものだと説明した。
新たな研究は、米メリーランド州にある国立がん研究所(NCI)のメレディス・イェガー教授が率いた。チェルノブイリ原発周辺の汚染レベルが高い地域で除染作業にあたった労働者たちの子どもと、無人となった町プリピャチや原発から70キロ圏内から避難した人たちの子どもを調べた。
主任研究員の1人でNCI職員のスティーヴン・チャノック博士は、両親と子どものDNAを比較できるように、家族全員に協力を求めたと話した。
「今回、原発事故が発生した時に(子宮に)存在していた子どもは対象にしていない。デノボ変異と呼ばれるものを対象にしている」
デノボ変異は、DNAでみられる新しい変異のことで、卵子や精子の細胞においてランダムに起こる。この変異が赤ちゃんの遺伝子設計図のどこで起こるかによって、影響がまったく出ないこともあるし、遺伝性疾患の原因になることもある。
プリピャチでは事故前、約5万人が暮らしていた
「生命が生まれる際、そうした変異は約50~100あり、ランダムに発生する」とチャノック博士は説明した。「ある意味、それらは進化の基本的な要素だ。人間の新たな変化はそうやって、1人誕生するごとに1回、実現されていく」。
「私たちは母親と父親のゲノムを分析し、さらに子どもについても調べた。さらに9カ月かけて、それらの変異の数に、両親の放射線被ばくと関連がある何らかの変化がないか確認した。その結果、何も見つからなかった」
科学者らによると、この結果は、両親の体が受けた放射線の影響が、将来妊娠する子どもにまったく及ばないことを意味するという。
「(広島と長崎への)原爆が投下された後、子どもをつくるのを怖がった人がたくさんいる」と、トマス教授はBBCニュースに話した。「さらに、福島の(原発)事故の後にも、子どもをもつことをとても心配した人たちがいる。自分たちが被ばくした放射線が、子どもに影響すると思ったからだ」。
「とても悲しいことだ。影響はないと示すことができれば、そうした恐怖心を和らげられるのではないかと期待している」
チェルノブイリの立ち入り禁止区域には今も自らの意思で暮らす人がいる
トマス教授は、今回のゲノム研究には関わらなかった。彼女と同僚たちは、チェルノブイリ関連のがんについての別の研究に取り組んでいる。チェルノブイリ原発の事故によって約5000件発生したとされる、甲状腺がんの研究だ。そのときの患者の大多数は、治療を受けて治ったという。
事故発生当時の当局は、汚染された牛乳が地域で販売されるのを防がなかった。多くの子どもたちがそれを飲み、原発が爆発によってまき散らした物質の1つである、放射性ヨウ素を大量に摂取した。
「基本的に、チェルノブイリ事故の放射線によって引き起こされる甲状腺がんと、それ以外の甲状腺がんに、違いはないことがわかった」とトマス教授は解説した。
「つまりチェルノブイリ事故では、治療不能な『悪魔の腫瘍』は生じていないということだ。他のケースとまったく同じように治療することができる」
チェルノブイリ原発の周辺は事故後、住民がいなくなった。原発施設には覆いが建造された
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