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 「あなたはひとりではありません。ここには不安、悲しみ、苦しみを分かち合える仲間がいます。一緒に歩いていきましょう」

 これは、「おれんじの会」が、愛媛県のがん患者やその家族らを中心に発足した2008年に掲げたメッセージです。がんは2人に1人が 罹患(りかん) する、ありふれた病気であるにもかかわらず、多くの患者や家族は孤独な中で病気に向き合わざるを得ない状況にあります。このメッセージは、まずは「ひとりじゃない」と感じられる場を作りたいという発足時のメンバーの思いを表しています。現在までずっと、この思いを活動の中心に据えています。

NPO法人 愛媛がんサポート おれんじの会

主に愛媛県のがん患者やその家族で発足した「おれんじの会」の設立総会(2008年4月)

ピアサポーターを養成し派遣

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がん経験者が患者らを支えるピアサポーターのための研修会(2021年3月)

 活動を始めてすぐに取り組んだのは、自分たちの経験を次の人たちに役立てるにはどうすればよいか、ということでした。ようやく「ピアサポート(仲間同士の支え合い)」という言葉が広がり始めた09年から、愛媛県のがん対策事業の一つとしてのピアサポーター養成事業の委託を受け、病院で開かれるサロンへピアサポーターを派遣することに取り組みました。

駆け込み寺「町なかサロン」

 その後、病院でのサロンの参加者から、いつでも気軽に行ける病院外のサロンを要望する声を聞き、12年、松山市中心部に「がんと向き合う人のための町なかサロン」を開設しました。愛媛県からの補助金を受け、月曜から金曜までいつでも立ち寄れる場所をピアサポーターのみで運営しています。

 病院で再発を聞かされた患者さんが「このまま家には戻れない。病院には泣く場所もない。しばらく泣かせて」と言って訪ねて来られたり、患者家族が見舞いに毎日通う途中で立ち寄ってひと休みされたりすることがありました。「駆け込み寺のようなものよね」と言ってくださった方もいらっしゃいました。

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いつでも気軽に行ける「町なかサロン」の外観

 

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町なかサロンで開かれた患者の集まり(2017年)

「みんなの質問ノート」を作成

 この他にも、自分たちの経験から、患者やその家族に役立つツールの作成にも取り組んできました。その一つが「みんなの質問ノート」です。自分たちの納得のいく治療選択のために医療者に質問することが大切だと分かっていても、いざ診察室に入ると言葉が出てこない、何と切りだせばよいかが分からないということが、しばしばあります。そのような経験を基に作成しました。例えば、「分からないことが出てきたら、後でもう少し詳しく聞きたいのですが、どうすればいいですか?」「家族の心配事や悩みは誰に相談すればよいですか?」など、質問の文言を具体的に示しました。医療者からの回答を書き込めるスペースも設けました。

患者家族を支える冊子も

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会のホームページからダウンロードできる「みんなの質問ノート」と冊子「あなたの大切な人を支えるために~家族必携~」

 「あなたの大切な人を支えるために~家族必携~」という冊子も作成しました。「第2の患者」といわれる家族に特化したもので、患者とのコミュニケーションの取り方や、家族自身の心身のケアの重要性などについてまとめたものです。これらのツールは、「おれんじの会」のホームページからダウンロードできます。

「ひとりじゃない」と伝え続ける

 新型コロナウイルスが2020年初めから感染拡大するという思いがけない事態により、わたしたちの活動も一時的に縮小、休止しなければならなくなり、改めて当事者団体の存在意義について考える機会となりました。わたしたちの答えは、「何があっても『ひとりじゃない』と伝え続ける」。これからも仲間とともに歩んでいきます。

NPO法人 愛媛がんサポート おれんじの会

 主に愛媛県内のがん患者・経験者、家族、遺族などの当事者団体として2008年に活動を開始。翌年にNPO法人化した。会員は現在、約100人。「交流」「学び」そして「社会へ向けての情報発信」を3本の柱として活動を続けている。毎月1回の例会は、交流会と勉強会を交互に開催し、活動開始以来ほぼ休むことなく続いており、開催回数は150回を超えた。行政や医療機関との協働にも取り組み、仲間が安心して治療や療養生活にのぞめる環境作りを目指している。

ホームページ  http://machinaka-orange.jp/

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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