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【出席者】

  • 千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センター長:吉村健佑氏
  • 成田赤十字病院感染症科部長:馳亮太氏
  • 千葉県健康福祉部医療整備課長:田村圭氏

(座談会は2021年5月29日に実施。文中敬称略。全6回掲載)

――ワクチンという明るい兆しがようやく見えてきましたが、今後の課題は何でしょうか。

馳:感染症に対する差別や恐怖が院内外にまだあります。私たちは、飛沫感染するウイルスでも適切なPPEをつけていれば大丈夫だと思っていたので、当初からそこまで恐怖心はありませんでした。ただ、対応に慣れていない部署の職員は、家に帰っても大丈夫か、家族や同僚と同じ部屋で食事をしてもいいかと、さまざまな不安を感じていたようです。知識不足からくる不安に対しては、丁寧に説明をして、正しく理解してもらって、恐怖や偏見を取り除くことが大切です。一般の方にも基本的なことを正しく理解していただきたいと思っています。

 また、簡単に変えられることではありませんが、日本の病院は大部屋が多く、構造的に感染症に対応しにくいという問題があります。個室が増えるだけでも、かなり対応しやすくなるはずです。

 今回、比較的成功していると言われるシンガポール、韓国、台湾などでは、過去の経験を基にして、対策を進化させています。過去にSARSやMERSでひどい目に遭い、その時の経験を基にその後苦心して今の体制を作り上げているのです。日本はSARSの時もMERSの時も、たまたま大きな被害に遭いませんでしたが、今回の新型コロナでは大きな被害を受けています。今回、うまくいかなかったことがたくさんあるので、この経験をどのように今後に繋げていくかがとても大切だと思います。次の新興感染症がいつどのようにやって来るかは分かりませんが、感染症対策の基本は共通する部分が多いので、今回の教訓を生かさなくてはいけません。

 馳氏

――国と地方の関係など、行政側の課題は何かありますか。

田村:国と自治体、どちらの立場にも立ったことはありますが、県の立場に立って、国との関係で、難しいなと感じることはままあります。

 例えば、医療は地域性が強いので、平時は都道府県が地域の事情に合わせて柔軟に対応すべきだとは思いますが、今回のような健康危機管理の場合は、専門性も高く、情報のアップデートも目まぐるしいので、平時と同様に都道府県で対応しようとしても難しい局面が少なくありません。国の方が公衆衛生に関する知見が集積していますから、普段よりも直接的な支援・介入があった方が、県としては動きやすいように感じます。他方、今回のように各地域で流行状況に大きな差が見られる中での対応・支援策の立案というのは、国の方でも難しい部分があったのではないかと想像します。

 田村氏

吉村:行政の動きを見ていて思うのは、緊急事態宣言を出すと言っても、結局は外に出るな、飲食店は営業するなと規制を強化しているのが目立ちます。危機に対応するには、同時に緩和をしなくてはいけないと思います。ワクチンの打ち手が歯科医などに拡大されたように、ある程度、平時の考え方を止めて危機対応をする必要があります。

 でも、日本の行政は平時のまま動きながら危機に対応しています。県庁も平時の業務をやった上で、新型コロナ対応をしています。複雑な決済ルートも平時のままです。新型コロナに関係のない部署もあり、9時~17時勤務を続けている職員もいるかもしれません。

 もっと人や資源を危機対応に集中させて、物事を迅速に決める体制を作れればいいと思います。それができるのはトップのリーダーシップしかないのですが、これまでの県庁からはそうした姿勢はあまり見えず、残念でした。3月に就任した新しい千葉県知事のリーダーシップに期待しています。

 吉村氏

――厚労省からは3月に、緊急時には一般医療を制限した上で第3波までのピーク時の2倍の感染者数を想定した医療提供体制計画を立てるよう通知が出ていました。県としては、それを受けてどのように対応をしたのですか。

田村:「一般医療を制限した上で」という前提部分について、千葉県に限らず、どの都道府県も悩まれたのではないかと思います。

 どういう状況になったときに何が制限されるのか、多くの国民が現実感を持ってイメージした上で、ある程度、国民的なコンセンサスが得られていないと、踏み込むのはなかなか難しい部分だと思います。

吉村:第1波の頃から、日本外科学会などが延期できる手術をリスト化して、公表していました。こういう具体的な基準を、学会レベルではなく、国の指針に入れて、ToDoリストを示してほしいです。都道府県が単独で政策立案して、吟味して、実施して、説明して、県民の合意を取り付けるのは到底無理だし、47都道府県が並行して進めるのは効率がよくありません。

 現在は、一般医療の制限という難しい判断を生煮えのまま現場に下ろしてしまっているのが実情だと思います。例えば、緊急事態宣言が出たらこれらの診療を止めると、ある程度は国が決めなくてはいけません。都道府県や個別の医療従事者が判断して、それぞれ患者さんに説明するなんてあり得ないでしょう。その場で「あなたの治療は優先されないので家に帰ってください」と伝えても、納得するわけがありません。国が枠組みを決めて国民に説明する必要があります。ここは今回の反省点の一つだと思います。

馳:一般医療、特に救急の受け入れをどの程度抑制するかは、近隣の病院の状況を見ながら、判断する必要があります。受け入れを断った救急患者さんが別の病院でケアを受けられずに、たらい回しになるようであっては困りますから。簡単ではないと思いますが、行政による何かしらの指針は必要だと思います。

新型コロナウイルス特設ページ COVID-19

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