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ウイルスとの闘いが長期化する中、家族の悲しみを和らげようと、病院は「看取り(みとり)」のあり方を模索しています。
(岡山放送局記者 平間一彰)
新型コロナ患者の死 難しい看取り
新型コロナウイルスで亡くなった患者は、感染防止対策のため、「納体袋」と呼ばれる特殊な袋で二重に包まれ、火葬されるのが一般的です。

家族は顔を見たり、最期の別れを言ったりすることができないまま、葬儀会社の車で運ばれて火葬されます。
葬儀や告別式もできないケースがほとんどです。
感染者の急増でひっ迫する現場
5月の1か月間に発表された死者は62人で、累計数の3分の2を占めます。亡くなった人の発表がなかったのは、1日だけ。
ある病院の医師は、「患者の受け入れや治療に優先順位をつけざるを得ない」と苦悩を明かしてくれました。
「看取り」ができず悩む医師や看護師
医師や看護師は、家族による看取りができないことに悩んでいました。

新型コロナ以外の病気では、患者が最期を迎える前に家族に面会してもらうことができます。しかし、コロナ病棟では感染対策の観点から難しく、家族のショックも計り知れないといいます。
石井雅子さん
「家族が最期の看取りすらできないのが、看護師にとってもつらいです」
84歳の女性 壮絶な23日間
患者は84歳の女性です。

PCR検査の結果、新型コロナに感染していることが判明。女性が利用していたデイサービスで感染したとみられています。
女性は変異株の感染が確認されましたが、入院当初は比較的元気でした。発熱とのどに違和感があった程度で、1人で歩くことができました。

レントゲンに写った肺は、全体が白くなっていました。
肺炎が進んでいたのです。

体内に酸素をどの程度取り込めているかを示す「酸素飽和度」や体温は乱高下。長引く入院や薬の影響で、会話やふるまいに一時的な混乱が生じる「せん妄」と呼ばれる症状も見られるようになりました。
次女は初めての面会で涙
タブレットを使った面会で画面に映し出されたのは、次女が最後に見た母親とは大きくかけ離れた姿でした。

衰弱した母親の姿にショックを受けた次女は、帰り際、石井さんに「もし、母親が亡くなってしまったら、会えますか?」と尋ねました。
石井雅子さん
「『亡くなられてからは会えないですよ』と伝えたときはショックを受けた様子でした。特に、お母さんと一緒に住んでお世話をされていたので、最後にそういう別れ方をしなければいけないのかと涙を流していました」
大好きなお母さんに会わせたい
泣きながら病院を後にした次女の姿を見て、石井さんは「大好きなお母さんになんとか会わせたい」と考えるようになりました。

そこで考えたのが、女性を隔離の必要がない一般病棟に移す方法。実現には、厚生労働省が示す隔離解除の4つの基準について検討しなければなりません。
1 発症から20日が経過していること
2 解熱から72時間が経過していること
3 呼吸器症状の改善
4 PCR検査も適宜考慮
石井さんは、医師を通じて、専門医でつくる院内の感染防御チームや岡山市保健所にも意見を求めました。
女性の容体は悪化の一途たどる
ところが、その前日の5月7日、女性の容体はさらに悪化します。肺炎が進行し、血圧も不安定となったのです。
カルテには「終末期のようにみえる」という記述が残されていました。
実現できるか確信が持てなかったからです。

家族に手を握られながら“旅立ち”
石井さんは急いで次女に連絡するとともに、女性を一般病棟に移す準備に取りかかりました。
女性が一般病棟に移って、次女が面会できたのは午後7時ごろ。
呼吸が弱くなり、いつ亡くなってもおかしくない状態でした。

次女は病床で意識のない母親の手を握りながら「お母さん、いままでありがとう」と声をかけ続けていたといいます。
そして、面会からおよそ3時間後、次女に見送られ、息を引き取りました。
大好きな母を送り出せた
手紙には「家族葬で大好きな母を送ることができ、心満たされる思いでした」と感謝の気持ちがつづられていました。
石井さんは、女性が次女の手を握ったまま旅立つことができてよかったと思う一方で、「新型コロナ患者の最期の看取り」という重い課題を突きつけられたと感じています。

石井雅子さん
「皆さんに元気になって帰っていただくのが私たちの目標ですが、看取りの段階が見えたときにどうすればいいのかをきちんと話し合っておくことで、患者さんや家族にきちんとしたケアを提供できるチームでありたいと思います」
新型コロナ患者の看取りをどう実現させるか
病気との闘いに勝てないとわかったとき、積極的な治療を続けて肉体的・精神的につらい思いをするよりも、残された大切な時間を家族と過ごしたり、看取りにあてたりすることを意味します。
医療関係者の間では、新型コロナの患者も「ギアチェンジ」を余儀なくされたときは、人間らしい最期の看取りの時間が必要だという声が上がっています。
新型コロナ患者の看取りをめぐっては、各病院が模索を続けています。岡山県内では家族に防護服を着て面会してもらっている病院もあります。
しかし、感染のリスクがあり、頻繁には面会できません。
別の病院では半透明の納体袋を使って、少なくとも顔を見てもらおうという試みも始まっています。

医療現場だけに難しい対応を委ねるのではなく、国や行政、それに専門家など含め社会全体で検討する必要があると感じました。

岡山放送局記者
平間 一彰
新型コロナと闘う医療現場の最前線を取材。
ICU=集中治療室やクラスターが起きた病院の看護師に密着。
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