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 大阪急性期・総合医療センター高度救命救急センターの西田岳史氏による、自施設における重症患者の家族面会や看取りの制限緩和に向けた取り組み。第2回は当初全面的に禁止されていた終末期の直接面会をどう緩和していったかについて。西田氏への追加インタビューとあわせて紹介する。(m3.com編集部・坂口恵)

前回の記事 『模索続くCOVID-19患者の終末期・看取り』 はこちら

終末期の直接面会、禁止から緩和の取り組み

「患者の手を握りたい」家族に支援

 さらに同センターでは、終末期の直接面会の制限を緩和する取り組みを進めている。直接面会ができる条件は家族本人がCOVID-19に感染していないこと、濃厚接触者でないこと。また、高齢、基礎疾患などの重症化因子がある場合は他の家族と相談した上で考慮している。

 面会のタイミングは現在のところ、「医療ケアチームが終末期と判断した時」と「看取り時」の最大2回。立ち会える家族は原則2人までとしているが、「家族構成、直接面会の条件などから1人から3人と調整することもある」(西田氏)という。面会時間は1回につき約10分程度。家族の入室前後のPPE(個人防護具)着脱は同センターのスタッフが支援し、入室の際も必ずスタッフが付き添うこととしている。「中には『手を握りたい』というご家族もいる。スタッフ立ち会いと指導の下で感染対策に配慮しながら、患者さんの手を握ってもらったり、体に触れてもらったりするなどの接触は許容している」と西田氏。

看護師アンケート「精神面の負担大きい」

 患者家族へのアンケートでは、0から10点の点数式の質問で回答のあった21件中4件は10点(理想的、ほぼ理想的)に近い評価だった。残りは「非常につらい」あるいは「つらい」と評価していた。看護師へのアンケートでは終末期の直接面会、死亡確認の場合の対応について、普段と比較して負担が大きかったかを聞いた。多くが「負担が大きかった」と回答していた他、精神面と業務面の負担については過半数が「精神面での負担が大きい」、さらに多くの看護師が「両方の負担が大きい」と回答した。

「面会禁止」から「1回に2人、2回まで」緩和

 同センターでは流行当初、「直接面会は原則禁止」から、「家族1人、最後に1回」そして今は「2人、2回」まで緩和が進んできた。重症COVID-19患者の終末期の直接面会を進める上のポイントとして、「病院ごとに面会基準があると思うが、それを踏まえて病院内のコンセンサスをあらかじめ得ておく必要がある。特に感染制御部と密に連絡を取って、どのようなご家族にどのように直接面会について話し合っていくのかを共有しておくことが重要」と述べた。

 なお、今回のCOVID-19流行で、医療スタッフへの患者や家族からのお礼や激励の手紙が増えたという。「コロナ対応で心がすさむ中で、こういったお手紙でむしろこちらが元気付けられることもあった。より良い患者対応・医療に力を尽くしていきたい。第6波も懸念される中、患者・家族への対応を含め、より良い形で乗り越えられるよう、今回の情報を参考にしていただければうれしい」と呼びかけた。

西田氏への一問一答:COVID-19終末期の適切な対応に必要なこととは

――先生のご施設では重症COVID-19患者への面会・家族ケアの対応を早くから進めていたとのことです。もともと、看護師を中心とした終末期対応チームがあり、周囲への働きかけがあったことが迅速な対応の背景にあったと伺いました。今後、さまざまな医療機関でCOVID-19患者さんの終末期や看取りの適切な対応が普及するための優先事項はありますか。

 医師、看護師、感染制御部など多職種の連携が欠かせないと思います。各部門での検討や周知が必要になりますので、密にコミュニケーションを取り、認識を共有することが重要です。COVID-19患者さんの終末期対応をより良くしたいと考えている医療スタッフは多いと思うので、そういった方々の意見や協力を得て進めていくのがスムーズではないでしょうか。

医療者のメンタル面のフォロー体制

――アンケート結果から、終末期のケアには、患者さんや家族とのコミュニケーションが取れることによる医療者側の精神的な負担軽減の効果も少なくないように見えました。一方、重症COVID-19患者さんの対応の中で、特に看護師の方の「優先度の高いケア」と業務外の負担になり得ることのバランスを取るのが難しそうだと拝察しました。COVID-19重症患者さんの対応の質にも関連すると思われる、医療スタッフの方たちのメンタル面のケアや業務面のフォローについてポイントを教えてください。

 通常業務外の家族対応については、なるべく日々の業務に負担がないよう、義務化せずに無理のない範囲で実施するようにしています。メンタル面のフォロー体制はまだ確立できていませんので、現状はスタッフ間でフォローし合う形を取っています。コロナ対応自体がメンタル面に影響を与えるものですので、病棟、あるいは病院全体で取り組むべき課題の一つだと思います。

――面会制限の緩和について「病院内のコンセンサス形成」「感染制御部との密なコミュニケーション」が重要とのことですが、具体例を教えていただけますか。

 はじめに家族や現場の医師・看護師から、面会制限の緩和について意見が挙がりました。現場の声を基に、面会制限についての条件や実施方法を感染制御部の担当者とともに協議し、いくつか改善案を作成しました。その改善案を院内のコロナ対策本部会議に議題として挙げ、採用された改善案を現場で実施することとしました。その後は、実際にやってみて見えてきた課題と改善点について、同様の流れで協議を繰り返し、少しずつ制限を緩和・最適化しながら現在に至ります。

「COVID-19患者の葬儀、行われない地域」も

――「いまだにCOVID-19で亡くなった患者さんの通夜や葬儀が行われていない地域もある」とのことです。厚生労働省などもCOVID-19診療指針の中で患者さんが亡くなった後の対応に関する推奨を示していますが、あまり浸透していない地域もあるということでしょうか。課題の解決にはどういったことが必要とお考えですか。

 業者によって対応は異なりますが、やはり心理的な抵抗感や、「万が一感染者が出てしまっては困る」ということで通常の通夜や葬儀を執り行えていないことが多いように感じます。また、火葬の際に行政が管轄している斎場側から制限がかかるケースもあります。COVID-19で亡くなった方の通夜、葬儀、火葬等の在り方に関して、医療機関と葬儀社、行政で認識の隔たりがあると思います。地域レベルで課題の解決に向けて議論する必要があると考えています。

――ご施設でのCOVID-19患者さんに対する全人的ケアについて、今後進めていきたい取り組みや研究活動などがあれば教えてください。

 ICU退室後の長期予後としてPICS(post-intensive care syndrome)や家族のメンタルヘルス障害(PICS-F:post-intensive care syndrome-family)が注目されています。ICU環境を少しでも快適なものにすることや、ICU退室後のフォローアップ体制を充実させることなど、患者・家族対応の質を高めることでPICS、PICS-Fの発症率を低減できればと考えています。

(了)

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