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がんなどによる心身の痛みを和らげ、患者のQOL(生活の質)を高める「緩和ケア」。病気発見の直後から治療と並行して受けることが大切とされるが、適切なケアにつながれずにいるケースは少なくない。そんな患者や家族の悩みに応えようと、名古屋市では医師や看護師などさまざまな職種が連携して相談活動に取り組んでいる。 (植木創太)
「伺った状態だと、今後症状が悪化してくる可能性が高いです。なるべく早いうちに在宅医と相談した方がいいでしょう」「介護保険の申請も相談しておくべきですが、行政の窓口はお分かりですか」
昨年十一月下旬の昼下がり、同市昭和区の医療法人生寿会の会議室で、医師や看護師、医療ソーシャルワーカーの三人が、高齢の母親が末期がんと診断された女性の相談に電話で応じていた。三人とも、がん緩和ケアに携わる医療者十人でつくる「tomoniなごや」のメンバー。「自宅で過ごさせてあげたいが、どうすればいいか」などの医療的な悩みから、「突然のことで病状を受け止め切れない」といった漠然とした不安まで、それぞれの専門性を生かして丁寧に答えていく。
相談は予約制。受付時に看護師らがある程度の状況を聞き取り、治療やケアの方法が聞きたいなら医師や緩和薬物療法認定薬剤師、患者や家族の精神面の不安が強いならば公認心理師というように、その内容に対応可能な専門職が相談当日に集合。管理栄養士が食事に関して助言することもある。利用は原則一回六十分、患者本人や家族一人につき二回ずつまでという制限を設けているが、相談者の負担は電話代やオンライン面談の通信費だけだ。
昨年七月の開始以降、三十件近い相談があった。メンバーの一人で緩和ケア認定看護師の川瀬真由美さん(45)は「始める前は終末期ばかりと思ったが、実際は治療期の人も多く、緩和ケアが身近になってきたと感じる」と語る。発起人で医師の亀井克典さん(65)は、診療の中で「最期まで自分らしく生きたい」と願いながら、適切なケアにつながるのが遅れた患者を数多く目にしてきた。国は十年以上前から「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」を目標に掲げるが、いまだに「末期で治療法がなくなった後に行うもの」と捉える人が患者にも医療者にも少なくなく、「緩和ケアの専門的な知識と簡単につながる場が必要」と思い立ったという。
今後、新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、対面相談にも取り組む方針。将来的には市内に拠点を設け、患者らが専門職とつながるサロンへの発展を目指す。現在は資金面や人員面で亀井さん個人や、亀井さんが理事長を務める生寿会の支援を受けているが、今春にtomoniなごやをNPO法人化し、地域や企業に広く支援を呼びかけていく。
昨年末に国がまとめた二〇二三年度から六年間の「第四期がん対策推進基本計画」の素案では、専門知識を持った医療従事者による緩和ケアチームを充実させることや、在宅療養支援診療所や介護者とも連携し、地域で緩和ケア体制を整える方針も示されている。亀井さんは「気軽に専門職から助言を受けられるようにして、一人でも多くの患者や家族の不安を和らげたい」と力を込める。
◆緩和ケアに関する主な相談先
<がん相談支援センター> 全国の「がん診療連携拠点病院」や「地域がん診療病院」などに設置。「がん情報サービス」のホームページやサポートセンター=電(0570)023410、平日前10〜後3。
<がん相談ホットライン>公益財団法人「日本対がん協会」の相談窓口=電03(3541)7830。原則毎日前10〜後1、後3〜6、看護師や社会福祉士が対応する。
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