[ad_1]


 「趣味:国際医療協力 Npo Knot Asia 代表。医療と教育で世界をつなぐことを目指し、鼻科の手術技術を用いて活動しております」。東京慈恵会医科大耳鼻咽喉(いんこう)科の大村和弘さん(43)のプロフィルにある趣味の欄を思わず二度見してしまった。しかし、東南アジアでのボランティア活動を12年にわたりカメラで追った話題のドキュメンタリー映画「Dr. Bala(ドクター・バラー)」(2022年)を見た後、その疑問が納得に変わった。「そうですね。国際協力は最大の楽しみです。自分の原点に戻れます」と大村さんは言い、「一番、お金も使っていますからね」と笑った。【聞き手・西田佐保子】


 ミャンマー、ラオス、ネパール――。大村さんは、07年から国際医療協力を始め、09年からは日本で診療を続ける傍ら、1年に1回、夏休みの1週間を利用して、鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡下手術などの精密かつ高度な技術を現地の医師に教えている。持続可能なボランティアのシステムを構築・実践し、国の医療レベル向上を目指す姿は、まさしく大村さんのビルマ語のニックネームである「Bala(力持ち)」だ。


 23年には、カンボジアでのボランティア活動が評価され、同国の国王から、最高位の勲章「モニサラポン大十字章(The Royal Order of Monisaraphon Knight Grand Cross)」を受章。最大の喜びは、「患者さんを笑顔にし、現地の医師に自国の患者さんを守る自信を持ってもらうこと」だと言い切る。


 そんな大村さんは、内科医だった父親の背中を見て医師を志し、高校生の時、日本で「死への準備教育」の普及に務めたカトリック司祭で哲学者の故アルフォンス・デーケンさんに興味を持つ。緩和ケアや終末期医療への関心は大学時代も続き、大学6年生でイギリスの聖トーマス病院に留学。緩和医療という分野を作り、「近代ホスピスの母」とも呼ばれる故シシリー・ソンダースさんを尋ね、直接言葉を交わしたという。


全ては医師の吉岡秀人さんとの出会いから始まった


 ――緩和医療への興味を持ちつつも、2年の初期研修を経た後、後期研修で選んだのは救急救命科です。


 ◆その頃には、緩和ケアは患者さんの痛みを最大限に取り除く「姿勢」だと理解するようになっていました。そのマインドを持ち続けて日々患者さんと向き合う、ということですね。


 後期研修医時代は、早く患者さんをマネジメントできる立場になりたいという思いが強く、同時に、緊急性の高い患者さんを助け、急変した場合にも臨機応変に対応できるようになりたかった。


 そこで選んだのが、人手不足で、3年目の研修医でも責任ある仕事を任される救急救命科です。当初から「救急救命科を生涯の専門に」とは考えていませんでした。


 ――海外での医療ボランティア活動をはじめたきっかけは?


 ◆05年、医学部進学予備校のときにお世話になった先生から講演会に誘われて、当時、寝る間もないほど忙しく働いていたので断ろうと思いましたが、気が変わって参加することにしました。


 「人間、苦労すればするほどいい。苦労すればするだけ、みんなが苦しんでいるときに笑っていられるんだ」。そんな泥臭いことを、痩せている40歳前後のおじさんがメチャクチャ熱く大きい声で語っていました。それが、開発途上国で無償の医療支援や医療人材育成を行う特定非営利活動法人ジャパンハートの創設者、吉岡秀人さんです。


 日本でトップクラスの経営者たちが吉岡さんに陶酔するように見つめていて、ビックリしましたね。そして講演会終了後には、「この人と働きたい」と思うようになっていたんです。


 ただ、当時は屋台でご飯は食べられなかったし、両親と夏休みに旅行というと、ハワイやヨーロッパなどのリゾート地。完全に“お坊ちゃん”な生活をしていたのに、東南アジアで国際協力をしようだなんて、自分がちょっと信じられませんでしたね。


一生続けられる国際協力の仕組み作りを模索


 ――映画で吉岡さんは、「自分みたいに、現地で長期滞在して医療活動する人間は10年か20年に1人。そんなのを待っていてはダメ」と発言していました。


 ◆あの言葉がなければ、今の僕はなかったかもしれません。


 実際、「吉岡さんと働く」と決めて、医療の国際協力に関する本を読みあさりました。その多くが「一時期、行っていました」という程度で継続していない。もしくは、アフガニスタンで活動した故・中村哲先生や、「ベトナムの赤ひげ先生」といわれる服部匡志先生のように、「現地に根を下ろして活動を続ける医師」のどちらかでした。


 でも自分は、家族の死に目にも会いたいし、子どもには日本の教育を受けさせたい。明らかに彼らとは隔たりがありました。


 吉岡さんから、1年に1回でもいい、一生続けられるシステムを作ればいい、というアドバイス…

この記事は有料記事です。

残り2029文字(全文4030文字)

[ad_2]

Source link

コメントを残す