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人生をかけたインフォームドコンセント
私が尊敬する、同じ病院で10年以上一緒に働かせてもらった他科の先生との思い出です。
その先生(以下J先生)は二つの病院でたまたま一緒に働かせてもらった外科医で、厳しさもありますが、本当に患者にも職員にも親身になってくれる方で、最高のお手本でした。普段は優しいのですが、私は2回怒られたことがあります。
1回目は田舎の病院に勤務していた時のことで、私は生検のインフォームドコンセントを笑いや雑談を交えながら患者、その家族と話していました。しかし、カーテンで仕切られたもう一つのスペースでは、転移した膵臓癌に対する外科治療のシビアなインフォームドコンセントが行われていました。
私が説明を終えてナースステーションに戻って仕事をしていると、J先生が鬼の形相で私に向かってきて一言、「インフォームドコンセントは人生をかけた話であることも多いのだから、時と場合をしっかり把握してから計画しなさい」と怒られました。その後は、部屋、同席者、患者と家族の関係について把握した上で、処置、手術、緩和ケアまで、全てのインフォームドコンセントの準備をするようになりました。
医師関係の忖度より患者の命
2回目は中核都市の基幹病院で勤務していた際に、上司が行った手術で2日後の日曜日に合併症が起こりました。日曜日で人も少ないし、上司のしたミスを露呈してしまうことになるので再手術するかどうかちゅうちょしていたところ、たまたま同じ病棟にいたJ先生が、「人間関係を気にしたり変なプライドにこだわったりして、患者が死んだらどうするんだ。上司に連絡をしなさい。もし来ないなら俺が一緒に手術に入ってやるから」と言われ、実際、上司には連絡がつかなかったのでJ先生と2人でトラブル修復手術を行いました。
その後は、保存的治療で診ている患者や、急な状態変化があり容態が悪化しそうな場合は、ちゅうちょなく観血的医療に踏み切る勇気を持てるようになりました。今ではJ先生は出世されて職場も別々となりましたが、現在も気軽に相談させてもらうこともできます。J先生には、外科系医師としてのあるべき姿を教えていただいたと思っています。
たむに
1990年代に西日本の国立大学を卒業。母校の腎泌尿器外科に入局した後、研修医、大学院、関連病院に勤務して専門医・指導医・医学博士を取得。現在は診療所で地域医療に従事。手術と論文が最優先の生活から年齢を重ねた今は健康とQOLを重視する生活に変化。最近のマイブームは読書、散歩、ゴルフと月1の食べ歩き。
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