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病院の患者数を、本年(2023年)3月末と新型コロナウイルス感染症流行前の2019年3月とで比較すると、入院では10.1%減、外来では2.3%減となり、依然として「コロナ禍前の状況」には戻っていない—。
また一般病床の稼働率(月末病床利用率)も、コロナ患者受け入れのための対応(空床確保、一部病床の休止)により、依然として「非常に低い水準」で推移している—。
厚生労働省が6月21日に公表した本年(2023年)3月分の病院報告から、こうした状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
厚労省は、全国の病院における毎月末の(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を集計し、「病院報告」として公表しています。医療提供体制の状況を迅速かつ経時的に把握でき、地域医療の在り方を考える際に非常に重要な資料となります(前月の状況に関する記事はこちら)。
本年(2023年)3月末における(1)「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院:112万3149人▼外来:128万3758人―となりました。
またコロナ感染症真っ只中の 2021年3月末と比べると、入院では3.0%の減少、外来では0.8%の減少となりました。
さらに、コロナ感染症の影響がない2019年3月末と比較してみると、入院では10.1%減、外来では2.3%減となっています。
入院・外来ともに「コロナ禍前の状況」には戻っていないことが確認できます。とりわけ入院については、「コロナ重症患者等をすぐさま受け入れられるような空床(即応病床)の確保」、「コロナ重症患者に対応するための、一部病棟・病床閉鎖(コロナ病床に医療専門職を集約化する)」などが続いていることが、「患者数が戻らない」ことの背景にあると考えられます。このため入院に関して、当面「患者減」傾向が継続すると考えられます。ただし、5類移行後には「すべての病院でコロナ入院患者を受け入れる」こととなっており、状況が変化していく可能性もあります(関連記事はこちら)。
医療法上の病床種別に「入院患者数」と「前年同月からの変化」を見てみると次のような状況が明らかになりました。
▼一般病床:62万5019人(前年同月比0.2%増、2021年3月比1.3%減、2019年3月比9.3%減)
▼療養病床:23万3122人(前年同月比3.4%減、2021年3月比6.2%減、2019年3月比15.6%減、ただし療養病床の減少なども加味しなければならない)
▼精神病床:26万357人(前年同月比2.1%減、2021年3月比3.9%減、2019年3月比7.6%減)
▼結核病床:942人(前年同月比7.6%減、2021年3月比16.2%減、2019年3月比37.3%減)
また、感染症病床の入院患者数動向を見ると、次のように推移しています。
▽2020年1月:79人
↓
(76人・96%増)
↓
▽2月:155人
↓
(142人・92%増)
↓
▽3月:297人
↓
(408人・137%増)
↓
▽4月:705人
↓
(291人・41.3%減)
↓
▽5月:414人
↓
(238人・57.5%減)
↓
▽6月:176人
↓
(438人・248.9%増)
↓
▽7月:614人
↓
(1739人・283.2%増)
↓
▽8月:2353人
↓
(276人・11.7%減)
↓
▽9月:2077人
↓
(146人・7.0%減)
↓
▽10月:1931人
↓
(1715人・188.8%増)
↓
▽11月:3646人
↓
(2652人・72.7%増)
↓
▽12月:6298人
↓
(2814人・44.7%増)
↓
▽2021年1月:9112人
↓
(2551人・28.0%減)
↓
▽2月:6561人
↓
(2223人・33.9%減)
↓
▽3月:4338人
↓
(2439人・56.2%増)
↓
▽4月:6777人
↓
(3693人・54.5%増)
↓
▽5月:1万470人
↓
(4192人・40.0%減)
↓
▽6月:6278人
↓
(823人・13.1%減)
↓
▽7月:5455人
↓
(8035人・147.3%増)
↓
▽8月:1万3490人
↓
(3520人・26.1%減)
↓
▽9月:9970人
↓
(7876人・79.0%減)
↓
▽10月:2094人
↓
(1269人・60.6%減)
↓
▽11月:825人
↓
(1人・0.1%減)
↓
▽12月:824人
↓
(6724人・816.0%増)
↓
▽2022年1月:7548人
↓
(8654人・114.7%増)
↓
▽2月:1万6202人
↓
(5386人・33.2%減)
↓
▽3月:1万816人
↓
(3539人・32.7%減)
↓
▽4月:7286人
↓
(1621人・22.2%減)
↓
▽5月:5665人
↓
(1844人・32.6%減)
↓
▽6月:3821人
↓
(6487人・69.8%減)
↓
▽7月:1万308人
↓
(3821人・37.1%増)
↓
▽8月:1万9924人
↓
(8448人・42.4%減)
↓
▽9月:1万1476人
↓
(5611人・48.9%減)
↓
▽10月:5865人
↓
(5061人・86.3%増)
↓
▽11月:1万926人
↓
(7222人・66.1%増)
↓
▽12月:1万8148人
↓
(456人・2.5%増)
↓
▽本年(2023年)1月:1万8604人
↓
(1万406人・44.1%減)
↓
▽2月:8198人
↓
(4488人・54.7%減)
↓
▽3月:3710人
なお、次なる新興感染症対策に向けて、改正感染症法案が成立。さらに医療計画への「新興感染症対策」記載事項も明らかにされています(関連記事はこちら)。
(2)の「平均在院日数」は病院全体では26.2日となり、前月から0.5日短縮しました。
病床種別に見ると、▼一般病床:15.7日(前月から0.5日短縮)▼療養病床:115.0日(同1.1日短縮)▼精神病床:253.9日(同6.2日短縮)▼結核病床:54.0日(同2.9日延伸)▼感染症病床:12.8日(同1.7日延伸)—となりました。依然としてコロナ感染症の影響で「ある月に短縮すれば、翌月に延伸し、さらにその翌月には再び短縮する」などの状況が繰り返されており、医療現場の混乱が続いています。
Gem Medでは繰り返し「不必要な長期入院が院内感染のリスクを高めてしまう。すべての病床で可能な限り、平均在院日数の短縮に向けた取り組みを進めるべき」と訴えています(ほかにもADLの低下、QOLの減少、経済的不安の増長などのデメリットがある)。コロナ感染症が猛威を振るう中で、こうした点がより明確になっていると言えます。
なお、「必要な入院が阻害されてはいけない」ことは述べるまでもありませんが、「病院経営を維持するために在院日数を伸ばす(空床を埋めるために在院日数を調整する)」ようなことは決して許されません。コロナ禍で「一般患者(コロナ感染症以外の傷病の患者)数が減少しているため、経営維持のために退院を先送りする(在院日数をコントロールする)」ケースが一部に生じているとの指摘もあります(関連記事はこちら)。
こうした在院日数延伸は「コロナ感染症の院内感染リスク(クラスター発生リスク)を高める」など医療の質を低下させるとともに、入院患者自身や医療保険財政に「不要な経済的負担を課す」もので、病院の信頼を損ねてしまいかねない点に最大限の留意が必要です。
急性期・高度急性期病床では、「コロナ感染患者受け入れのために空床を確保しておく」「コロナ感染症対応のために、一部病棟・病室を閉鎖し医療資源を集約化する」ことなどが必要なことも手伝って病床利用率が下がっていると考えられます。これらの数字からも「コロナ感染症流行前の状況にはまだまだ戻っていない」ことを再確認できます。
病床種別に見ると次のような状況です。
▼一般病床:67.0%(前年同月比1.3ポイント低下、2021年3月比2.1ポイント低下、2019年3月比4.7ポイント低下)
▼療養病床:84.0%(前年同月比1.4ポイント低下、2021年3月比1.4ポイント低下、2019年3月比2.9ポイント低下)
▼精神病床:80.8%(前年同月比1.1ポイント低下、2021年3月比2.3ポイント低下、2019年3月比4.3ポイント低下)
▼結核病床:23.9%(前年同月比0.8ポイント低下、2021年3月比4.1ポイント低下、2019年3月比7.2ポイント低下)
▼感染症病床:144.2%(前年同月比266.1ポイント低下、2021年3月比125.4ポイント低下)
上述のように、一般病床(とりわけ急性期病床)を中心に「コロナ感染症の重症患者が発生した場合に、すぐさま受け入れられる」ように事実上の空床にしておく(即応病床)ことも求められており、長期間、低い水準で推移しています。
これまで見てきたように、コロナ感染症を始めとする感染症対策を考えるうえでも「地域における病院の機能分化・連携の強化」が非常に重要です。
機能分化の推進は、地域医療構想の実現はもとより、▼医師働き方改革の実現▼医師偏在の解消―にもつながります。医師働き方改革は「医師の健康・生命を維持」しながら、「地域医療提供体制の確保」を目指すもので、2024年4月から新たな時間外労働上限(原則960時間以内)がスタートします。例えば、各地域において「救急」「産科」などの機能を特定の病院に「集約」することができれば、個々の病院の医療資源が比較的潤沢となり、例えば「夜勤や宿直」などにおける1人1人の医療従事者の負担軽減につながります(働き方改革)。
また、こうした負担軽減は「地方勤務を忌避する」医療従事者の心理的不安解消につながり、「症例集約」によるキャリア形成にも結び付きます。このため医師をはじめとする医療従事者の偏在解消にも役立ちます。
なお、地域医療構想の実現に向けて、436の公立・公的病院等はもちろん民間病院も含めた「病院の機能再検証」、公立病院の「経営強化プラン策定」について、2022年度・23年度に集中的に行うことが要請されています(関連記事はこちら(機能再検証)とこちら(経営強化プラン))が、民間病院では「まだ十分に進んでおらず、テコ入れが求められる」状況です(関連記事はこちら)。
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