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鼻や口、喉などに腫瘍ができる「頭頸部(とうけいぶ)がん」。治療は切除手術が基本だが、呼吸や食事などへの影響もあるため、生活の質(QOL)との両立が重要になる。薬や機器の進歩により、早期に治療すれば体の機能を維持しやすくなり、選択肢も増えてきた。専門医は「違和感を覚えたら早めに受診を」と呼びかける。27日は「世界頭頸部がんの日」-。 (植木創太)
国立がん研究センターの統計によると、二〇一九年に新たに頭頸部がんと診断された人は約四万八千人。がん全体に占める割合は5%程度で、肺がんなどと比べて認知度が低い。名古屋大病院(名古屋市昭和区)の頭頸部がん専門医、西尾直樹さん(43)は「喉や鼻にがんができると思わず、違和感が続いても放置しがち。進行して見つかる例が後を絶たない」と話す。
頭頸部には、生活するのに重要な機能が詰まっている。がんが進行して広範囲の切除が必要になれば、声を失ったり、のみ込みが困難になったりと大きな影響が出る。顔の見た目が変化することもあるため、治療方針を決める際には、再発や転移の可能性を減らすための「根治性」と、治療後の生活との兼ね合いを考えなければならない。
治療は、手術と放射線、抗がん剤を、腫瘍の部位や状態によって組み合わせる。切除できるなら、手術して根治を目指すのが基本。最近は大きな切除を伴わない内視鏡や手術支援ロボットによる治療が発達し、体への負担も少なくなった。鼻から喉の間にある「上咽頭」のように構造上切除が難しい場合は、放射線と抗がん剤を併用する。
薬物療法では、患者自身の免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ「免疫チェックポイント阻害薬」が一七年から健康保険の対象になった。手術で腫瘍を取り切れなくても、薬で進行を抑えられるようになり、生存率が向上した。がん細胞に光に反応する薬を付け、レーザー光を当てて破壊する「光免疫療法」や、放射線療法の「ホウ素中性子捕捉療法」も続いて保険適用となり、切除不能な進行がんや再発の場合にも治療の選択肢が広がった。
治療後に社会復帰する人も増え、広範囲を切除した際、体の他の部位から筋肉や血管などの組織を移植し、機能を温存する手術も重視されるようになってきた。西尾さんは「ここ十年の頭頸部がん治療の進歩は本当に著しい」と語る。
だが、進行すると機能維持が難しく、QOLを損なう可能性が高いことに変わりはない。頭頸部がんの最大のリスク要因は喫煙や飲酒とされ、発見時に食道や肺のがんを伴う患者も少なくない。西尾さんは「早期発見と予防が大事。食事の際にのみ込みにくかったり、血痰(けったん)が出たりする症状が続くなら、迷わず頭頸部がん専門医のいる医療機関を受診してほしい」と話す。
◆切らない選択「動注療法」 カテーテル使い薬物投与
頭頸部がんの薬物治療では、細い管(カテーテル)を使い、血管を通じて抗がん剤を腫瘍近くまで届ける「動注療法」もある。症例は選ぶが、放射線療法とうまく併用することで切除しないで済むケースもある。
茨城県の五十代の男性は一五年に進行性の舌がんと診断された。当初は「しゃべれなくなるなら死んだ方がまし」と切除手術を拒んだが、「切らないなら」と動注療法を開始。現在は、がんが消えた寛解状態という。
岐阜県美濃加茂市の中部国際医療センターでは、舌がん治療の際、側頭部の動脈に専用のさやを付けてから管を入れることで脳梗塞を合併するリスクも低減。放射線治療専門医の不破信和さん(69)は「患者の長い人生を考え、切らない選択肢も用意したい」と話す。
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