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2021年度の社会保障給付費は、新型コロナウイルス感染症を受けて前年度から4.9%増加し、過去最高の138兆7433億円となった。コロナ禍で医療費の増加が目立つ―。

国立社会保障・人口問題研究所が8月4日に公表した2019年度の「社会保障費用統計」から、こういった状況が明らかになりました(社人研のサイトはこちら(概要)こちら(本文))。

また施設整備費などを含めた「社会支出」は、2021年度に142兆9802億円、対GDP比は25.97%となりました。徐々に欧州大陸諸国の高水準に近づいてきています。

社会保障費用統計は、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など社会保障制度に関する1年間の支出(社会保障費)を、▼OECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」▼ILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」—の2通りで集計したものです。前者の「社会支出」(OECD基準)では、後者の「社会保障給付費」(ILO基準)に比べ、施設整備費など直接個人にわたらない藻など、より広範囲は支出を集計範囲に含めています。

まず、我が国で戦後間もなくから集計されている後者の「社会保障給付費」(ILO基準)を見てみます。

2021年度の社会保障給付費は138兆7433億円で、前年度に比べて6兆5283億円・4.9%の増加となりました。GDP(国内総生産)に対する社会保障給付費の割合は25.20%で、前年度に比べて0.61ポイント高まっています。2012年度から15年度までは低下を続け、2016年度には増加、2017年度に再び低下しましたが、2018年度・19年度と増加。さらに新型コロナウイルス感染症が蔓延した2020年度に大幅に増加し、コロナ禍の2021年度にも同様に傾向が続いています。

国民1人当たりの社会保障給付費は110万5500円で、前年度に比べて5万7400円・5.5%の増加となりました。また、1世帯当たりで見ると261万8300円で、2019年度に比べて26万8800円・11.4%増加しています(2020年度はコロナ禍で国民生活基礎調査が行われなかったため未集計)。

社会保障給付費を「部門」別に見てみると、年金給付が最も多く55兆8151億円(前年度比0.3%増)、次いで医療給付47兆4205億円(同11.0%増)、介護対策給付11兆円2117億円(同1.8%減)などとなっています。社会保障給付費全体に占める割合(シェア)は、▼年金:40.2%(前年度に比べて1.9ポイント減)▼医療:34.2%(同1.9ポイント増)▼介護8.1%(同0.5ポイント減)—という状況です。コロナ禍で医療給付が増加している状況が伺えます。

社会保障給付費の推移(2021年度社会保障費用統計1 230804)

高齢化の進展は「年金」や「介護」に係る費用の増加に直結します。ただし年金制度については、▼給付費の伸びを「支え手」(現役世代)の減少などに応じて調整するマクロ経済スライドの導入▼支給開始年齢の延伸―など、一定程度、高齢化による給付費増を吸収する仕組みが導入され、伸びも鈍化していることが確認できます。

一方、介護保険制度では、こうした仕組みが導入されておらず、高齢者の増加に伴って給付費がそのまま増加していく格好となっています。

また、医療では、「医療の高度化」(例えば高額な新薬など)が給付費増に大きく関係しますが、「高齢化」の影響も決して小さくはありません。

昨年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームを占める、いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。また、2025年度から2040年度にかけては、高齢者の数そのものは大きく増えないものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。

社会保障費の財源は我々国民が負担しており(税金や保険料)、社会保障費の増加は「我々国民の負担が増加する」ことを意味します。「給付の在り方」に関する議論を本格化させていく必要があります(関連記事はこちら)。

また、社会保障財源を見てみると163兆4389億円で、前年度に比べて21兆2876億円・11.5%の大幅減となっていますが、「2020年度にコロナ禍で社会保障財源が対前年度比39.7%増の大幅増となった」ことの反動です。2019年度に比べれば、31兆1658億円・23.6%増となっています。

財源の内訳を見ると、▼社会保険料:46.2%(前年度比6.4ポイント増、2019年度比9.8ポイント減)▼公費:40.4%(同8.5ポイント増、1.2ポイント増)—などとなりました。コロナ禍で財源シェアが大きく揺れ動いていることが伺えます。

次に、OECD基準に基づく「社会支出」を見てみましょう。先進諸国で使用されている指標で、国際比較を行う場合にはこちらが有用です。

冒頭で述べたとおり、社会支出は社会保障給付費よりも広い範囲の支出をカバーしており、国民個々人への直接給付ではない「施設整備費」なども含まれます。2021年度には、前年度に比べて6兆6298億円、4.9%増の142兆9802億円となりました(1980年度の集計開始以降の最高額を更新)。

国民1人当たりで見ると113万9300円(前年度に比べて5万8400円・5.4%増)、1世帯当たりで見ると269万8200円(2019年度に比べて27万3700円・11.3%増、2020年度は上述のとおりコロナ禍で未集計)となっています。

社会支出を政策分野別に見ると、▼高齢:48兆7809億円(前年度から0.0%の微減)・全体に占めるシェア34.1%(同1.7ポイント減)▼保健:60兆5208億円(同8.3%増)・シェア42.3%(同1.3ポイント増)▼家族:13兆5363億円(同25.9%増)・シェア9.5%(同1.6ポイント増)―などという状況です。

「家族」の中には、児童手当、児童扶養手当、施設等給付、育児・介護休業給付等などが含まれており、2021年度の増加には「は子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金による増加」が大きく影響しています。少子化対策の進展とともに今後もシェアが増加していくと見込まれます。

なお、「保健」の増加にはコロナ感染症対応(ワクチン接種費補助、医療給付費増など)が影響しています。

社会支出の推移(2021年度社会保障費用統計2 230804)

またGDPに占める社会支出の割合は25.97%(前年度比0.61ポイント増)となりました。

我が国における社会支出の対GDP比(25.97%、2021年度)は、スウェーデン(25.47%、2019年度)と近い水準ですが、▼フランス(35.62%、2020年度)▼アメリカ合衆国(29.67%、2020年度)▼ドイツ(28.18%、2019年度)—などに近づいています。

社会支出の国際比較(2021年度社会保障費用統計3 230804)

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