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超高齢社会と医療の高度化により、この30年間で倍の40兆円台に膨らんだ国民医療費。国民皆保険制度の破綻を回避し、持続可能にするにはどうすればよいか。今回は高額化が著しい「がんの医療経済」をテーマに、がん医療の専門家である医師の垣添忠生さん(82)と國頭(くにとう)英夫さん(61)に話し合ってもらった。 (司会=編集委員・杉谷剛)
◆無駄な投与減らす治療開発
-高額のがん治療薬が増えています。
國頭 十年ちょっと前までは、高血圧や生活習慣病の薬が売り上げ上位でしたが、二〇一〇年代の前半から抗がん剤がトップになり、昨年度は一位、二位、四位ががんの薬です。医学の進歩を体現しているから仕方がない面もありますが、その中で、皆保険制度の持続可能性を考えています。
-國頭先生はこのほど「誰も考えようとしなかった癌(がん)の医療経済」(中外医学社)を出しました。
國頭 高額薬がどんどん出てきて医療費がどーんと上がって、果たして日本の医療保険制度が持つのか、勉強するほど怖くなってきました。日本の医療保険料は高い。結局、現役世代と将来世代の負担になっている。例えば風邪薬や湿布薬を保険の対象から外せという意見がある。それはその通りなのでしょうが、私はがんが専門だから自分のエリアで、できることから始めようと思いました。
垣添 私も現場にいる間は、皆保険制度のおかげで、患者さんの懐具合を考えずに医療ができるのはありがたいと感じてきた。それがいま、危機感を覚える。がんの医療経済は考えないといけないと、ずっと思っていました。
-がん医療費を節約する方法はありますか。
國頭 例えば手術の後で血液を調べて、再発する可能性がまずないと分かれば、再発予防の治療は必要なくなる。いまは誰が再発するのか、よく分からないから、みんなに薬を使う。結果論ですが、使わなくても治った人がいる以上、中には明らかにむだな投与が含まれています。
垣添 最近はリキッドバイオプシーという血液診断で、再発の危険性がある程度分かるようになった。危険性のない人には薬の使用をやめられれば、それだけでもすっきりとした医療ができる。
國頭 それはコストの削減だけでなく、患者さんのためでもあります。無駄な治療による副作用に苦しまなくていい。また、従来、抗がん剤はいっぱい使わなければ効かないと考えられていましたが、そうでない薬も増えてきました。無駄な分の薬の量を減らす治療の開発も節約のひとつです。
それから同じ効果、同じ副作用なら値段の安い薬を使うべきです。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で、各医療機関がどんな抗がん剤を使っているか、調査をしています。それを見た上で、「高いだけの薬」を使う場合がないか、みんなで反省しようと考えています。
◆「高いだけの薬」脱却
-医療機関の中には、高い薬を使って薬価差で利益を上げようとするところもありますね。
垣添 高い薬を使って高い治療を行って、病院の収益を上げるという動きは確かにある。逆に抗がん剤は一般的に副作用が強いから、うーんと量を下げて副作用がないような、だけど効果がないような投与をして、お金を儲(もう)けるような医療機関もある。非常に大きな問題です。
國頭 たぶん医者も患者さんも高い薬がありがたく感じるのでしょう。どうせ保険医療制度で負担額が変わらないとなると、「高級品志向」みたいになるようです。
垣添 五年前に九州がんセンターから北海道がんセンターまで、仕事場と行ったり来たりしながら、がんサバイバー支援ののぼりを持って計三千五百キロくらい歩きました。患者さんや家族らと面談したけど、がん医療費が高くなって払いきれないという話をずいぶん聞きました。高額療養費制度で、後から戻ってくるとしても負担しきれない。
國頭 とにかく高い薬をどんどん使って、治療していることが良いというような、医者の一種の思い込みですけど、そこからいかにして脱するかが肝要でしょうね。
<かきぞえ・ただお> 1941年生まれ。東京大医学部卒。都立豊島病院、東大医学部泌尿器科助手などを経て75年から国立がん研究センター中央病院に勤務。手術部長、病院長などを務め、2002年に総長に就任。07年から名誉総長。日本対がん協会会長、がん研究振興財団理事。「患者さんと家族のためのがんの最新医療」「悲しみの中にいる、あなたへの処方箋」など著書多数。
<くにとう・ひでお> 1961年鳥取県生まれ。東京大医学部卒。国立がん研究センター中央病院、三井記念病院などを経て2014年から日赤医療センター化学療法科部長。里見清一のペンネームで「医学の勝利が国家を滅ぼす」「医師の一分」など著書多数。がん治療薬など薬価の急上昇に危機感を覚え、21年に非営利型一般社団法人SATOMI臨床研究プロジェクトを設立。ホームページはhttps://s-cp.or.jp/
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