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厚労省有識者会議が報告書
がん研究、次の10年へ

 厚生労働省の有識者会議は20日、今後10年間で国として進めるべきがん研究の方向性を示した報告書を取りまとめ、公表した【表参照】。予防に関する研究の推進を第一に掲げ、診断・治療、がんとの共生に役立つ研究の促進などを柱に据えている。報告書の内容を解説するとともに、今後の課題などについて、東京大学大学院の中川恵一特任教授の見解を紹介する。

■リスク予測など予防に重点

 今後求められる研究の方向性について報告書は、「患者のライフステージや個々のがんの特性によって患者やその家族等のニーズは異なることを認識することが重要」とした、現在の「がん研究10か年戦略」で掲げる考え方を引き継ぎつつ、予防や診断・治療、がんとの共生における研究成果が社会に定着するよう取り組みの強化を求めた。

 例えば「予防」では、近年、発がんリスクを高める遺伝子差異や生活習慣、感染症が明らかになってきたものの、予防の根拠とするには研究が不十分と指摘。より精緻な発がんリスクの予測や、早期発見が困難ながんに対する診断技術の開発、簡便で幅広く実施できる予防手法や新たな検診手法の実用化を促している。

 「診断・治療」については、患者に合わせた医療や患者に優しい治療法の充実を掲げた。具体的には、重粒子線治療などの高度な放射線療法の開発や、緩和ケアにおける新たな薬剤や治療法の開発を挙げている。

■「共生」に向けた課題解決も

 「共生」では、がん患者の療養生活が多様化している現状を踏まえ、患者や家族らが抱える心理・社会的な課題や、医療提供体制などさまざまな格差を解決する必要性を明記している。

 その上で報告書は、ライフステージやがんの特性に着目した研究の重要性にも触れている。希少がんや小児がんなど患者数の少ないがんは、治療薬の臨床試験が進みにくいといった課題があり、新たな試験法の検討を促している。

 また、「AYA世代」と呼ばれる若年のがんでは、将来子どもを授かることができるような治療法の研究を挙げた。高齢者に対しては、合併症や認知機能に考慮するよう求めている。

■今年度中に新たな戦略策定

 がんについては、1981年に日本人の死因第1位となって以来、対策の基礎となる研究を推進する戦略が84年度に初めて策定され、10年ごとに見直しが行われている。

 現在の戦略は2023年度末に期限を迎えるため、今年4月から有識者会議で議論がスタートした。これに先立つ3月には政府が、がん対策の方向性を示した「第4期がん対策推進基本計画」を閣議決定。有識者会議でも同基本計画の内容を踏まえて議論された。政府は報告書を基に、新たな戦略を23年度中に策定する。

 公明党は05年、党内に「がん対策プロジェクトチーム(現・がん対策推進本部)」を設置。以来、専門家や患者団体との意見交換、現場視察を精力的に重ね、早期発見・予防へ検診体制の充実などを政府に提言してきた。さらに「国を挙げてがんの克服に取り組むべき」との立場から、06年のがん対策基本法の制定をリード。乳がん・子宮頸がん検診無料クーポン配布や、ピロリ菌除菌治療への保険適用を実現するなど、党を挙げて対策を推進している。

■個人の特性に合わせた検診に/東京大学大学院 中川恵一特任教授

 今回の報告書は、第4期がん対策推進基本計画をベースに検討されており、バランスのある内容になったと評価できる。

 あくまで、「研究のための研究」になってはならない。この点で、予防やがんとの共生に関する研究の推進を掲げた意義は大きい。

 このうち予防については検診の充実が鍵となる。現在の検診内容は一律で、例えば、飲酒で顔が赤くなりやすい人、ピロリ菌の有無といった個人の特性やリスクに合わせた「検診の層別化」によって2次予防を進めることが重要だ。

 血液や尿を使った「リキッドバイオプシー」による診断技術の開発も掲げられた。この分野は海外で進んでいるだけに、日本も研究を急ぐことが求められる。

 一方、がん研究に関する残された課題として、難治性がんの生存率に大きな改善が見られない現状が報告書に明記された点は重く受け止める必要がある。中でも膵臓がんは、部位別の死亡数(男女計)で見ると4位と高い位置にある。検診も含めて、研究に力点を置くべきだ。

 がん教育の質や国民のヘルスリテラシー(健康に関する知識・理解)向上への研究も急がれる。

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