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10月18日(水)、市立札幌開成中等教育学校のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業、本学の技術支援・設備共用コアステーション(CoSMOS)との連携で「課題研究スタートアップセミナー2023」が開催され、アカデミックファンタジスタから5名、CoSMOSから2名の計7名が同校で講義しました。アカデミックファンタジスタは、2021年度からこの事業の講師派遣に協力しています。

「ナノテクノロジーが拓く新しい電池」理学研究院 小林弘明 准教授

生活に欠かせないリチウムイオン電池。理学研究院の小林さんは、リチウムイオン電池の開発や、どのようにエネルギーを取り出しているかについてわかりやすく解説しました。また、現在の課題である次世代電池の開発について、リチウムに代わる元素を使用した場合のメリット・デメリットを挙げ、開発の難しさについて話しました。講義の中で、高性能で安全な電池を開発するためには、新しい材料を調べる必要があり、そのためには知識が必要だと話した小林さん。どんな研究であっても知識を得るために継続した学びが必要だと語り、生徒たちへこれからも楽しく学んでほしいと伝えました。講義を受けた生徒からは「最先端の研究の難しさがよくわかった」「様々な分野と関わりながら研究を進める必要があると知ったなどの感想が寄せられました。

リチウムイオン電池の開発について解説する小林准教授(撮影:広報・渉外担当 長尾美歩)
リチウムイオン電池の開発について解説する小林准教授(撮影:広報・渉外担当 長尾美歩)

「人工知能を使って未来の医療を作る」医学研究院 工藤興亮 教授

現代社会において、様々な分野で実用化されている人工知能(AI)。工藤さんは、まずAIの基礎知識や歴史を紹介した上で、医療現場におけるAIを使った画像診断技術について、実際の画像や映像を交えながら解説しました。画質向上、病変の自動検出、自動診断などの最新技術により、医療の質の向上や医師の負担軽減に繋がっているといいます。さらに、昨今注目を浴びているChat GPTを使う際の注意点や、今後の医療AIの展望などを踏まえ、AIは人間を楽にしてくれるツールである一方で、危険性もあるため、上手に使っていくことが大切だと生徒たちへ伝えました。講義を聞いた生徒からは「AIのメリット・デメリットを学び、考えさせられた」「思っていた以上に自分達の生活と深い関わりがあると感じた」との声が寄せられ、研究への興味が更に深まった様子でした。

医療AIについて解説する工藤教授(撮影:広報・渉外担当 東 明日香)
医療AIについて解説する工藤教授(撮影:広報・渉外担当 東 明日香)

「血管と病気」歯学研究院/データ駆動型融合研究創発拠点 樋田京子 教授

全身に張り巡らされ、生体のライフラインである「血管」。樋田さんは、がん、心疾患、新型コロナウイルス感染症などの病気の進行にも血管が密接にかかわっているといいます。がんなどの病気では血管が新たに作られる「血管新生」という現象があり、腫瘍の増殖に重要な役割を果たしています。講義では、その血管新生を阻害することで、がんの縮小や転移を防ぐ「血管新生阻害療法」という新しいがん治療法を解説。さらに、樋田研究室で現在取り組んでいる、がん腫瘍血管の異常性を解明し、診断・治療への応用を目指す研究の一部を紹介しました。講義を受けた生徒からは「病気と血管の深い関係に驚いた」「病気を別な視点から見るという研究が興味深かった」との感想が寄せられました。

血管と病気の関係を解説する樋田教授(撮影:広報・渉外担当 長尾美歩)
血管と病気の関係を解説する樋田教授(撮影:広報・渉外担当 長尾美歩)

「毒の不思議」獣医学研究院 石塚 真由美 教授

身近な野菜や果物にも発がん性物質が入っていたり、酸素も水も多すぎれば毒になると話した石塚さんは、「すべてのものは毒である」というのが毒性学における基本的な考えであることを伝えました。その上で、なぜ私たちは毒の影響受けずに過ごせるかなど、毒から身を守る仕組みを説明。また、コアラとユーカリの関係を例に挙げ、ユーカリが生き延びるために新たな毒を作り出す一方で、コアラがそれを解毒できるよう対応していると話し、生体防御機能として毒を利用する生物と、それを食べる動物の攻防について解説しました。毒性学という、これまでに馴染みの薄かった研究についての講義を受けた生徒たちは、毒と生物の関係のほか、視野を広げ研究に挑む石塚さんの姿に、大学への興味を深めた様子でした。

生物の毒について解説する石塚教授(撮影:広報・渉外担当 長尾美歩)
生物の毒について解説する石塚教授(撮影:広報・渉外担当 長尾美歩)

「いま学ぶアイヌ民族の歴史:先住民研究から世界を見る」アイヌ・先住民研究センター 加藤博文 教授

先住民考古学が専門の加藤さんは、北海道を中心とした日本列島北部に暮らしてきた先住民族であるアイヌ民族の歴史を研究しています。講義では、発掘した土器や遺跡を調査することで、アイヌ民族の文化や、当時の海外との交易ルートなどがわかってきたことを解説しました。また、世界には今もおよそ3億7000万人の先住民族が暮らし、世界文化遺産の多くが先住民族に関わるものであることを紹介。アイヌ民族のような、国家をもたない社会の歴史を知ることは世界に不可欠な視点だと話しました。生徒からは「広く知られている歴史とは違う文化があったことに驚いた」「これまでと違う視点で見るとこんなにもアイヌ民族と世界につながりがあるとは思わなかった」などの感想が寄せられました。

アイヌ民族の歴史について解説する加藤教授(撮影:広報・コミュニケーション部門 齋藤有香)
アイヌ民族の歴史について解説する加藤教授(撮影:広報・コミュニケーション部門 齋藤有香)

「研究と技術のデザイン戦略」創成研究機構グローバルファシリティセンター 佐々木 隆太 特任助教(CoSMOS)

大学における持続的な成果の創出と社会還元を支えるEBPM研究基盤強化推進体制の確立を目指すCoSMOSにおいてマネージャーを務める佐々木さんは、大学における教育研究環境整備や技術人材育成に関係する仕事をしています。「科学技術を『科学』と『技術』に分けて考えてみましょう」という切り口で開始された講義では、身近な社会課題(例えば新型コロナ感染症)を科学と技術と社会、それぞれの意義と関係性に分けて解説しました。後半には、大学の研究と技術について、それらを支え、協働する「人」に焦点をあてた説明があり、科学のプロ(研究者)と技術のプロ(技術者)がチームを組むことで大きな成果を生み出す事例などが紹介されました。

※CoSMOS:北海道大学技術支援・設備共用コアステーション、EBPM:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/エビデンスに基づく政策立案

科学技術について解説する佐々木特任助教(提供:CoSMOS)
科学技術について解説する佐々木特任助教(提供:CoSMOS)

「北海道の地震と地震観測」理学研究院一柳昌義 技術専門員 (CoSMOS)

地震火山研究観測センターにて、技術面から支える技術専門職員として観測業務に従事している一柳さん。地震計を実演しながら、北海道の地震活動と今後発生が予測される地震についての講義を行いました。札幌周辺には三つの想定断層があり、直下型の最大震度7前後が起きた場合には地盤の軟弱な札幌北東付近で液状化発生のリスクが高い事や、千島海溝型地震が起きた場合には周辺の沿岸部で最大25mクラスの津波が予想される事を説明しました。私たちは自然災害を避ける事ができず、できる対策にも限りがありますが、自分なりにできる対策はあります。寒さが厳しい北海道に住む私たちは、いつ起こるかわからない地震に対して地域性を含めて準備する重要性を認識させられる講義でした。講義を聞いた生徒たちは、いつ起こるか分からない地震に対して、寒さの厳しい地域に合った準備が必要だと認識を深めた様子でした。

地震計について説明する一柳技術専門員(提供:CoSMOS)
地震計について説明する一柳技術専門員(提供:CoSMOS)

日時:2023年10月18日(水)13:10―14:50

会場:市立札幌開成中等教育学校

参加生徒:3年生、4年生 約320名

(広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門)

アカデミックファンタジスタとは?

北海道大学の研究者が知の最前線を出張講義や現場体験を通して高校生などに伝える事業、「アカデミックファンタジスタ(Academic Fantasista)」。内閣府が推進する「国民との科学・技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと2012年から継続的に実施しています。今年度は北海道の高校等を対象に31名の教員が講義を実施しています。2023年度の参加教員はこちら

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