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2022.4.12.(火)
我が国のがん対策の礎となる「がん対策推進基本計画」、がん診療の砦となる「がん診療連携拠点病院」等の指定要件において、「緩和ケア提供体制の充実」「相談支援センターの体制充実」を図る必要がある―。
後者の相談支援センターに関しては、例えば都道府県拠点病院では「専従の相談員3人以上、事務職2人以上、がん診療担当医師(兼任可)1人以上」の、地域拠点病院では「専従2人+専任1人以上の相談員、事務職1人以上、がん診療担当医師(兼任可)1人以上」の配置を求め、相談員のうち1人は看護師、1人は社会福祉士等の有資格者とするべきである―。
都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会は4月5日、厚生労働省健康局の佐原康之局長に宛てて、こうした内容を盛り込んだ「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針および次期基本計画策定に向けて:緩和ケアおよび相談支援・情報提供の機能の充実に関する提案書」を提出しました(国がんのサイトはこちら)。
がん患者・家族の不安・困りごとが、確実に相談支援センターに届くような体制を拠点病院をあげて構築せよ
我が国の死因第1位を独走する「がん」―。
がんを克服するための予防・治療・共生・研究・基盤整備といった「がん対策」は、概ね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に沿って進められます。現在、2018-22年度を対象とする第3期計画が稼働しており、近く2023年度からの新たな第4期がん対策推進基本計画策定に向けた議論が本格的に開始されます。
また、「日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下、我が国では、▼高度ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」等▼小児特性に踏まえた高度がん医療を提供する「小児がん拠点病院」等▼ゲノム解析結果を踏まえて適切ながん医療提供を目指す「がんゲノム医療中核拠点病院」等―の整備が進められています。
がん医療は高度化(例えば新たな医療技術の開発・普及など)し、患者ニーズも多様化しており、がん医療を取り巻く環境は絶えず変化します。このため「がん診療連携拠点病院」等の指定要件についても定期的に見直すことが求められます。▼成人拠点・小児拠点では4年に一度▼ゲノム拠点では2年に一度―見直すこととされ、現在、厚生労働省の検討会・ワーキンググループで要件見直し論議が進められ、今年(2022年)7月に新要件が設定される見込みです(関連記事はこちら(がん診療提供体制検討会)とこちら(がん診療連携拠点病院等について)とこちら(がんゲノム医療中核拠点病院等について)とこちら(小児がん拠点病院))。
そうした中で、がん医療のレベルアップ・拠点病院の連携強化を目的に設置されている「都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会」(国立がん研究センターと都道府県がん診療連携拠点病院とで組織される)が今般、佐原健康局長に宛てて▼次期(第4期)がん対策推進基本計画の策定▼がん診療連携拠点病院等の指定要件見直し―に向けた提案を行いました。提案内容の柱は「緩和ケアの充実」「相談支援・情報提供機能充実」で、今後、上記の検討会・ワーキングでの議論にも提案内容が浮上してくることでしょう。
協議会では、基本計画に次の4点を反映することを求めています。
(1)緩和ケアの地域連携の強化
(2)緩和ケアセンターや緩和ケアチームの体制強化
(3)がん相談支援センターの理念と目標の明記
(4)がん相談支援センターに課せられた目標を達成するにあたって求められる指針での要件の明文化
まず(1)では、患者・家族の意向・希望に合わせた終末期医療提供が重要であるが、我が国では「がん患者の苦痛緩和が十分とは言えない」(2019-20年の国がんによる遺族調査では、苦痛なく最期を迎えた患者割合は41.5%にとどまっている)状況を踏まえ、次の3点により「地域単位の医療介護福祉連携を強化する」ことを提案しました。
▼拠点病院は、「患者が地域医療機関や在宅療養中に身体的・精神心理的苦痛、社会的問題 等が生じた場合」に、地域の医療介護福祉従事者の依頼に応じて緩和ケアの支援(相談等)を行う
▼拠点病院が地域の患者の身体的・精神心理的苦痛、社会的問題等について支援(相談等)を行う際には、「拠点病院の主治医と緩和ケアチームが協働して対処」する
▼拠点病院は、都道府県をはじめ地域の医療介護福祉施設と連携協力のもと、地域の「看取りの状況」や「緩和ケアに関する医療介護福祉サービスリソース」を把握し、地域の特性に適した方法で、関係する医療介護福祉従事者や患者・家族・地域の住民へ情報を提供する
あわせて(2)では「拠点病院の緩和ケアセンター・緩和ケアチーム」に、▼地域の医療介護福祉従事者や患者・家族との連絡調整▼緩和ケアの提供体制の整備に係る書類等作成―などを担う専任(専従が望ましい)の事務員を配置する」ことを提案。(1)を拠点病院に求めることで、事務負担が確実に増すことを踏まえた提案です。
今年1月の健保組合医療費、コロナ禍前の2020年1月比べて2.9%増
また(3)では、拠点病院の「相談支援センター」について、▼拠点病院の全スタッフが患者・家族等の不安や困りごとに気づき、必要時にはがん相談支援センターにつなげる▼利用しやすくする▼質の高い相談支援を行う▼公平・中立な相談の場を確保し、科学的根拠に基づく信頼できる情報等をもとに意思決定ができる体制を整備する▼地域の関係者らと協力して、社会にがんに関する適切な理解を促す―ことを目指す、といった「目標」「理念」を明示することを提案しました。
あわせて(4)では、がん相談センターが上記目標を実現できるようにするために、例えば次のような対策をとることを提案しています。
【都道府県がん診療連携協議会】
▽都道府県内全ての拠点病院が、病院をあげて診療等の対応状況について情報の集約に協力する仕組みを作る
▽症例が少ない相談(小児・AYA、希少がん等)の対応や情報提供について、役割分担や連携構築についての議論を進め、情報公開する
▽ピアサポーター・患者支援団体と各拠点病院を円滑につなぐため、都道府県協議会等がコーディネート機能を担う
【各拠点病院】
▽診断後早期に知るべき情報を確実に伝えるための体制を「病院をあげて」構築する
▽苦痛や困難を抱える患者・家族を支援につなぐために、病院をあげてスクリーニングと患者・家族支援に取り組む
▽「スタッフが時事変化するがん対策に関わる支援情報を学ぶ機会(院内教育等)を年1回以上設ける」ことを整備指針(指定要件)に盛り込む
▽「医療者が『がん相談支援センターの理念や基本姿勢、対応内容』を学ぶ機会(院内教育等)を年1回以上設ける」ことを整備指針(指定要件)に盛り込む
▽「主治医が『がん相談支援センターの利用を勧める』ことができる体制」を病院をあげて整備することの重要性を整備指針(指定要件)に盛り込む
▽がん相談支援センターの人員配置体制を次のように強化する(整備指針(指定要件)に明示)
▼都道府県拠点病院・高度型地域拠点病院:専従3人以上、一般型地域拠点病院:専従2人+専任1人以上、地域がん診療病院:専従2人以上―の相談員配置
▼相談員のうち1名は看護師、もう1名は社会福祉士・精神保健福祉士の資格保有者とする
▼がん診療に関わる診療科の医師(兼任可)を1名配置
▼都道府県拠点病院・高度型地域拠点病院:2人以上、一般型地域拠点病院・地域がん診療病院:1人以上—の事務職配置(センターの上部組織(がん診療センターなど)との兼任可)
▽相談員の研修修了要件を「定期的な知識更新を要する」形に変更し、知識のアップデートを支える体制・資材(診療ガイドライン、相談対応を録音するための機材等)を整える必要性などを整備指針(指定要件)に明示する
がん診療連携拠点病院には、国立がん研究センターがん対策情報センターによる「相談支援センター相談員研修・基礎研修」を修了した専従・専任の相談支援者を配置する「相談支援センター」の設置が義務付けられています。院内外のがん患者や家族、さらには地域住民および医療機関などからのさまざまな相談に対応することが求められますが、▼利用率が低い▼患者の相談ニーズが多様化しており、体制の充実が求められる―などの課題もあります。
上記提案も踏まえて、拠点病院における相談支援体制の充実を図っていくことが重要でしょう。関連して協議会では「体制充実に必要な予算の確保」も佐原健康局長に求めています。
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